着物通な方の箪笥の中身を見てみたいと思いませんか?
雑誌などでも個人の着物や帯が紹介されていると、商品よりも興味深く見ることが多いと思います。
今回紹介する「きもの熱」の中でも著者の清野恵里子さんのきものや帯が紹介されています。
素敵な逸品の装いは、目の肥やしはもちろんのこと、自身の装いに取り入れられる部分も多く、コーディネートの参考におすすめの着物の本です。
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清野恵里子著「きもの熱」とは
平成15年から16年にかけて集英社の雑誌「メイプル」に24回にわたり連載された「きもの熱」が終了した後に、単行本として清野恵里子著「きもの熱」が2005年に第1刷発行されました。
発行から年数は経っていますが、掲載されている着物や帯は全く古さを感じさせないもので、モデル着用の装いにおいても、メイク髪型などを含め、現在でもお洒落で参考になる内容になっています。
書籍の構成
著者の清野恵里子さんの着物との関わりや出会いを、幼少期の頃からの日常の思い出などを絡めて、紹介してあります。
着物や帯を、それぞれにまつわるエピソードを絡めながら紹介されているので、清野恵里子さんの人生の一節を垣間見るようで、興味深く読み進めていくことができました。
人によって、着物や帯の生地や色、文様などの捉え方は様々だと思いますが、清野恵里子さんのそれらに対する捉え方が細かく紹介されているので、着物や帯に対しての捉え方の参考になりました。
ただ美しいだけではない、もっと深い次元での感じ方が出来ることは、着物の学びに大きく参考になると思います。
通常の会話では分からない、他人の思考を知ることができる、着物の本です。
「きもの熱」で、とても便利で親切に感じたところは、モデルの装いや、紹介されているショールや雨コートなどが、文中だけではなく別途説明されていることです。
「樋口可南子のきものまわり」では、ほとんどが文中での説明でしたが、「きもの熱」では別途説明されていたので、後に興味のある着物や帯についての情報を知りたい時に便利でした。
また、全体の姿の写真以外にも、上半身のアップや帯のアップなど、大きく見ることができるところも良い点でした。
私もそうですが着物好きな方は、好きな着物や帯に対しての探究心が強いので、大きな写真で出来るだけ細部まで観察したいという気持ちがあると思います。
書籍の中の装いのモデル
「きもの熱」の中での着装モデルは、料亭の若女将やオーナー、大学教授、地唄師範など一般の方でした。
今回「素敵だな」と思った方は、成井節子さんという方です。
名だたる作家の方々が集まる銀座のお店「小眉」のオーナーで、きものに厳しい目をお持ちの方だそうです。
「きもの熱」の中では、濃紺の総絣の結城紬や薄茶地に濃い葡萄色の総亀甲絣の結城紬、白地の総亀甲絣の越後上布、墨色に近いグレー地の品川恭子さんの友禅の単衣の装いなのですが、着物のコーディネートの前に、成井節子さんの佇まいに目が向いてしまう素敵な方です。
本来はそれほど惹かれない薄茶地の結城紬の着物ですが、成井節子さんの雰囲気があまりにも印象的で、「薄茶地の着物も素敵だな」と新たに興味がわいてきてしまいました。
結局は着物ではなく、装う人によって着物の見え方が違ってくるということなのかもしれません。
そんなことを感じさせてくれる、佇まいです。
掲載されている着物や帯
着物では、重要無形文化財の結城紬や宮古上布、越後上布、作家物の着物や伊兵衛織の着物など。
帯では、龍村平蔵や人間国宝の作品、作家物の型絵染など掲載されています。
着物好きには垂涎の品々です。
「高級なものばかりで参考にならない」との意見もあるようですが、やはり目を肥やすためには、その分野での最高の品質のものを知っておくことは大切なことだと思います。
実際に身につけることができなくてもピンからキリを知っておき、自分に必要なものを選ぶことが良いと思っています。
品質の高い品物はデザインも素敵です。
デザインの高い品質の感覚を勉強するには、品質の高い品物を見る事が近道だと思います。
無地の着物
今回、新たに興味がわいた着物が、無地の着物です。
「きもの熱」の中では、茶系の深い色合いの無地の鬼しぼ縮緬やごく薄い茶色の無地の結城紬、丁子色の無地の結城紬が紹介されていました。
その中でも、鬼しぼ縮緬の生地の光沢感や滑らかさが重厚感が感じられ、とても素晴らしく印象的でした。
最近では、あまり施さない「ぐし縫い」ですが、茶系の深い色合いにより、より一層映えていて「色無地を作るなら、鬼しぼ縮緬の生地に濃い深い色合いにしよう」と思ってしまいました。
清野恵里子さんとはどんな人?
文筆家で雑誌を中心に、企画、構成、執筆活動を行っていらっしゃいます。
現代のやきものや工芸品、古美術にいたるまでジャンルを広げ、いずれもその美意識に貫かれた独自の視点で執筆されています。
集英社 学芸・ノンフィクション より
終りに
「樋口可南子のきものまわり」の姉妹編となる「きもの熱」ですが、こちらの「きもの熱」の方が、さらりと読み終えてしまう本でした。
清野恵里子さんの所有されている着物や帯を拝見できて、清野恵里子さんの美意識を感じることができる1冊でした。
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