夏のきものといえば、やはり上布を思い浮かべます。
繊細な苧麻で織り上げる上布は盛夏を彩る贅沢なお洒落着です。
夏のきものが好きな方にとっては麻や自然布が気になると思いますが、その中でも宮古上布や越後上布、芭蕉布などは憧れの存在です。
上布は高価なきものでありながらカジュアルな印象があり、また期間限定のアイテムですが、出来るだけ多くのシーンで活用できればと思っています。
最近では美しい色彩の宮古上布を見かけますが、今回は宮古上布の中でも昔ながらの紺上布のコーディネートを取り上げてみたいと思います。
紺上布はよりカジュアルな印象が強いですが、帯合わせによってすごくモダンな印象になる素敵なコーディネートもご紹介します。
宮古上布「紺上布」の総亀甲絣の着物と芭蕉布の無地九寸名古屋帯
宮古上布「紺上布」とは
宮古上布は別名、薩摩上布といわれていました。
下地稲石が制作し琉球王に献上したことから始まり、琉球王府指定の献納布となりました。
薩摩に侵攻されてからは所納品として明治に続くまで、長く貢物として織られてきました。
別途記事 宮古上布の歴史
かつては、南国の多彩な染料を使いの絣柄の色上布も見らたそうですが、宮古上布といえば藍染めの「紺上布」の印象が強いように思えます。
「紺上布」は薩摩の好みによるものと考えられていますが、近年では無地や控え目な絣柄の色上布などもみられるようになっています。
宮古上布「紺上布」は布の薄いのが特徴で、優秀品は天保(てんぽう)銭の穴を通るといわれていました。
八重山上布に比べて杵打ちの回数が多く、独特の光沢をもっているのが特徴です。
水通し前の「紺上布」の着尺は布とは思えないくらいテリテリで、まるで布に蝋を引いたような、または薄いビニールテープを張り合わせたかのような質感を感じます。
着用や着用後のお手入れにより、その独特の光沢感はなくなっていくそうです。
「紺上布」は沖縄本島北部で栽培している琉球藍を用いて染めます。
絣糸を作るのは大島紬と同じように締機を使い琉球藍で繰り返し染め上げます。
琉球藍とは
琉球藍・・・キツネノマゴ科
沖縄や台湾などに自生する常緑多年草。
葉と茎を水に浸して数日寝かせ、石灰を沈殿させたものが泥藍になります。
泥藍を発酵建にして染めます。
技法は中国から渡来したもので、沖縄の染織には欠かせない主要な染料になります。
宮古上布「紺上布」のコーディネート・お気に入り5選
No1・勝山健史さんの織り名古屋帯
宮古上布「紺上布」のナンミンタマ絣のきものと勝山健史さんの織り名古屋帯
年間生産反数が10反を下回っている宮古上布ですが、このナンミンタマという柄は古典的な総絣で、非常に高度な技術を必要とする貴重な反物なのだそうです。
亀甲とは違い、独立した方形に十字絣が整然と並んでいます。
墨色に近い濃い藍色の「紺上布」のきものに、白地にモノトーンの配色の縞のモダンな織り名古屋帯の組み合わせは、見た時にとても衝撃を受けたコーディネートでした。
帯締め、帯揚げも色目を控え目にしたモノトーンコーディネートは、都会的で垢抜けた印象を受けとても素敵です。
カジュアルな印象が強い「紺上布」を、すっきりとした印象にがらりと変えてしまう帯合わせは、是非参考にしてみたいと思います。
無地感覚の絣ならではのコーディネートだと思うので、細かな総絣に惹かれます。
No2・玉那覇有公さんの琉球紅型の名古屋帯
宮古上布「紺上布」の亀甲絣のきものと玉那覇有公さんの琉球紅型の名古屋帯
総亀甲絣の「紺上布」は、本来は男柄で凛とした印象があります。
確かに亀甲絣は男性的なイメージで、反対に蚊絣は女性的なイメージがあります。
個人的には凛とした印象の亀甲絣が好きで、能登上布や宮古上布「紺上布」は亀甲絣の着物を楽しんでいます。
玉那覇有公さんの琉球紅型の名古屋帯は越後上布の帯地を使っているということなので、 北の「越後上布」に南の「宮古上布」のとても贅沢なコーディネートになります。
本当に溜息ものの流石の組み合わせです。
No3・山下健さんの紗紬九寸名古屋帯
宮古上布「紺上布」の亀甲絣のきものと山下健さんの紗紬九寸名古屋帯
お気に入りコーディネートNo3と同じ総亀甲絣の宮古上布「紺上布」に水色と白が基調の紗紬の九寸名古屋帯の組み合わせです。
全体を藍色の濃淡でまとめた爽やかな装いは、誰にでも取り入れやすいコーディネートだと思います。
No4・喜如嘉の芭蕉布の八寸名古屋帯
宮古上布「紺上布」の七宝絣のきものと喜如嘉の芭蕉布の八寸名古屋帯
宮古上布「紺上布」と芭蕉布の沖縄の織の組み合わせも憧れの贅沢なコーディネートです。
大き目な七宝文様が織り出された「紺上布」にすっきりとした経絣の芭蕉布の組み合わせです。
やはり自然布を用いたコーディネートは通好みな印象があり、憧れの夏素材です。
芭蕉布はバナナと同じ仲間の糸芭蕉の茎の繊維から作られますが、その繊維は固く張りがあるのが特徴です。
そのため、使い始めには結びにくいという意見も耳にすることがあります。
繰り返し使用して、芭蕉布の帯やきものを馴染みよく育てていくのも楽しそうですね。
糸が繊細な越後上布以外の上布や絹縮、紗紬に合わせるのがよいと読んだことがあります。
No5・麻地に秋草文様を型染めした名古屋帯
宮古上布「紺上布」の竪縞のきものに麻地に秋草文様を型染めした名古屋帯
粋な印象のする竪縞の「紺上布」にかわいらしい秋草文様の型染のコーディネートです。
こちらも色数は抑えていますが、桔梗のような萩のような丸い形の文様がかわいらしい印象を与えてくれます。
落ち着いた色目でかわいらしい着こなしをしたい時に参考にしたいコーディネートです。
終りに
宮古上布の中でも「紺上布」のコーディネートを取り上げてみましたが、好みのコーディネートはありましたか?
年代や周りの環境などでその時々に好みも変化していきますが、最近はすっきりとした色目のきものや帯が気になります。
因みに私が好きなコーディネートはNo1とNo2です。
No1はいつかチャレンジしてみたい、No2は憧れのコーディネートです。