日本の伝統色の中で高貴な色としてまずあがる色が紫色です。
603年に聖徳太子が定めた「冠位十二階」では、身分階級を色で管理していました。
「紫、青、赤、黄色、白、黒」の6つの色の濃淡で12色に分けられていて、この「冠位十二階」の制度によって、それまでの身分階級に関わらず能力により評価されるようになりました。
「冠位十二階」には、五行五色説や非五行五色説などあるようですが、紫色は江戸時代から最も徳のある色といわれているようです。
今回は日本の伝統色の中でも、最も徳のある色である紫色染料の「紫根・紫根染」についてまとめてみました。
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日本の伝統色の紫色が出来るまで
紫色の染料となる「紫根」とは?
紫色の染料になる「紫草」は毎年6月頃に小さな白い可憐な花をつけます。
紫草の根を「紫根」といいます。
根は平均して30cmほどの長さがあります。
黒みがかった根に紫色の色素が含まれており、その色素が紫色の染料として使われています。
紫色の作り方
紫根(紫草の根)からの色素の抽出
・土から抜いたばかりの根を水で綺麗に洗い乾燥させます。
・乾燥させた根を湯につけます。
・軟らかくなった根を石臼と杵で細かく砕いてつぶします。
・麻袋に潰した根を入れ、湯を満たした水槽の中で手もみして色素を出していきます。
・色が出なくなったら、再び石臼に戻し杵で細かくつぶします。(3回ほど繰り返し色素を抽出)
乾燥させた根は長期間保存すると質が低下するので、根を掘り出して染めるまでの時間は短いほど良い色に染まるといわれています。
紫根の媒染
紫色を繊維に定着させるために欠かせないものが媒染剤です。
・紫根の媒染には椿の枝葉を燃やした灰汁を希釈したものを使用します。
・椿の灰汁にはアルミニウム塩が含まれていて、それが繊維に色素を定着させる働きをします。
紫根の染
染料が抽出されたら、染めの作業に入ります。
・紫色の染料の中に糸や布を入れて染めます。(染料の中に浸しただけでは発色しない)
・水洗いして媒染液の中に入れて紫色に発色させます。(媒染液は椿の灰汁)
紫根の色素は損なわれやすいので、染料は出来るだけ早く使用しなければいけないそうです。
紫色は染色技術の中でも最も手間のかかる色とされています。
その上濃い色を出すためには繰り返し染め重ねが必要になります。
何度も染め重ねることで、美しい紫色を出すことが出来ます。
紫色のいろいろ
京紫と江戸紫
京紫・・・赤みの紫、古代紫よりも明るい色目ともいわれています。
江戸紫・・・青みの紫(江戸紫といえば助六のの鉢巻ですね!)江戸紫の冴えた青味の紫を今紫(いまむらさき)と呼ばれていました。
他にも、染め回数による色の濃さの違いや色素分解した染料の使用、染料の掛け合わせなどの違いによる様々な紫色があります。
二藍(ふたあい)・葡萄色(えびいろ)・藤色(ふじいろ)・菫色(すみれいろ)・滅紫(けしむらさき、めっし)など・・・
参考資料
きもののたのしみ改訂版 (きもの文化検定公式教本) [ 全日本きもの振興会 ]
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