古くは子供の背縫いの無い着物に対して、近年ではお宮参りなどの晴れ着に「背守り」が施されています。
子供の着物特有の「背守り」とは、どのような意味があるのでしょうか?
また日本の子供の「背守り」とは少し違う意味合いを持つ世界の刺繍について、まとめてみました。
日本の子どもの背守り、刺繍装飾の意味
子どもの成長を願う魔よけの意味
子どもの1つ身の着物の背中に付ける「飾り縫い」のことを言い、「背紋飾り」とも言われています。
古くから「背縫いのない着物を着ると魔がさす」といわれていて、子どもの1つ身のような背中心に縫い目のない着物を着る、小さな子供に対しての「お守り」として付けられていました。
背中に「目(縫い目)」が無い着物を着ている子供のために、背中から魔が入り込まないように、子供の健やかな成長を願う母親の思いが込められています。
上の写真のようなアップリケタイプの背紋の他に、12針縫いつけた刺繍タイプの背守りもあります。
世界の刺繍装飾の意味・目的とは?
中世ヨーロッパの刺繍
現代では刺繍といえばオート・クチュールでの刺繍装飾など、まず女性モードが思い浮かべられますが、本来の18世紀の宮廷が生み出した優雅な刺繍装飾の流行は、主に男性の衣装に見られるもので、女性の衣装には織の物が使用されていました。
中世ヨーロッパの貴族の間では、主に権力や財力を象徴する手段として、繊細で優美な刺繍装飾が用いられていました。
競ったように繊細で広範囲な刺繍装飾が施された、中世の男性の肖像画に見る衣装を思い浮かべるとイメージしやすいです。
東南アジアの魔よけの意味
東南アジアの刺繍装飾は、権力や財力の象徴以外に「魔よけ」の意味が込められています。
襟元や袖口に施してある場合がありますが、これには魔除けの意味が込められています。
当時は衣服の襟元・袖口・裾部分などの空いている箇所から悪魔が侵入してくると考えられており、その箇所に刺繍等の装飾を施すことで魔除けの効果があると考えられていました。
施す場所や対象年齢が違いますが、前述した日本においての子供の「背守り」と同じ意味になります。
嫉妬や妬みからの護身
襟元・袖口・裾部分の刺繍装飾では「魔よけ」の意味がありましたが、衣装の背面に豪華な刺繍を施してある場合は少し違う意味が含まれています。
こちらは、悪魔ではなく実際の人間の嫉妬や妬みに対しての護身府的な意味があります。
守り札ならぬ守り刺繍と言った感じでしょうか。
世界各国いつの時代も、嫉妬や妬みなどの人間関係の悩みは共通なのですね。
現代の子どもの背守り
古くは子供の背縫いの無い着物に対して、近年ではお宮参りなどの晴れ着に「背守り」が施されていましたが、現代ではもっと身近に「背守り」を取り入れることを提案されています。
子供が普段着るようなTシャツ等の背中に、簡単な刺繍の「背守り」を縫ってあげるだけでも、喜んでくれそうですね。
終りに
現在では刺繍装飾に「魔よけ」や「護身」などの意味を持つ感覚は少なくなっていると思います。
日本刺繍に限らず、ビーズ刺繍やオートクチュール刺繍など、刺繍がもっと身近な存在になったら素敵ですね。
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