夏の着物に大活躍の麻の長襦袢には、仕立て方や寸法に気を付けたほうが良い点がいくつかあります。特に透ける素材の着物では押さえておくと良い点がいくつかあります。
「水通し」「寸法」など知っていると良い重要な点をご紹介します。
仕立て上がってから直すことにならないように、透ける着物も心配せずに気持ちよく着ることが出来るように、私の失敗談も交えながら失敗しないポイントや注意点をご紹介します。
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麻の長襦袢を仕立てる際のポイントと注意点
麻の長襦袢の仕立ては、涼やかでこれからの季節にぴったりです。失敗しないためのポイントと注意点を以下にまとめました。
水通しは必ず行う
麻は水に濡れると縮みやすい性質があります。仕立てる前に必ず「水通し」をして、生地を安定させることが重要です。これを怠ると、仕立て上がってから洗濯した際に大きく縮んでしまい、仕立て直しが必要になる可能性があります。
水通しとは
水通しとは、仕立てる前の布地を水に浸して乾かす工程のことです。特に綿や麻などの天然繊維は、水に濡れると縮む性質があるため、この水通しを行うことで、生地の縮みをあらかじめ出し切り、寸法を安定させる目的があります。
水通しのメリット
- 仕立て上がりの寸法の安定性
- これが水通しをする最大のメリットです。天然繊維は水に触れると縮む特性があります。水通しをすることで、あらかじめ生地の縮みを出し切ってしまうため、仕立て上がった着物や長襦袢が、洗濯や雨などで濡れても大幅に縮む心配がなくなります。これにより、せっかく仕立てたものが着られなくなる、仕立て直しが必要になるという事態を防げます。
- 生地のゆがみや斜行の改善
- 織られたばかりの生地は、製造工程で張力がかかったり、乾燥によって繊維がゆがんだりしていることがあります。水通しをすることで、繊維が本来の自然な状態に戻り、生地のゆがみや斜行(地の目が斜めにずれている状態)が改善されます。これにより、裁断や縫製がしやすくなり、仕立て上がりがよりまっすぐで美しいものになります。
- 糊抜き効果
- 生地によっては、製造過程で張りを持たせるために「糊(のり)」が施されていることがあります。水通しによってこの糊が適度に落ち、生地本来の柔らかさや風合いが引き出されます。特に麻の場合は、より肌触りが良くなることが多いです。
- 汚れや不純物の除去
- 生地には、製造過程で付着した微細な汚れや不純物、染料の余分なものが残っていることがあります。水通しを行うことで、これらの不純物が洗い流され、清潔な状態で仕立てに進むことができます。
- 肌触りの向上
- 水通しによって生地がほぐれ、糊が落ちることで、繊維が柔らかくなり、肌触りが向上します。特に直接肌に触れる長襦袢の場合、着心地の良さに直結します。
水通しのデメリット
- 時間と費用がかかる
- 生地を浸水させ、干し、乾燥させるという一連の作業は、時間と費用がかかります。
- 生地の風合いの変化
- 多くの場合は良い方向に風合いが変化しますが、まれに、水通しによって生地の張りや光沢が失われたり、想定と異なる風合いになったりすることがあるかもしれません。
- 生地を傷めるリスク
- 水通しの際、生地を乱暴に扱ったり、強く絞ったりすると、生地が傷んだり、シワが定着したりする可能性がありますが、自分で水通しをすることは少ないと思います。プロが行うのであればリスクは少ないです。
- 色の滲みや色落ちのリスク
- 特に濃い色の生地や、染め方に特徴がある生地の場合、水通しによって色が滲んだり、色落ちしたりする可能性があります。事前に目立たない場所で色落ちテストを行うなどの対策が必要になる場合があります。こちらもプロが行うのであればリスクは少ないです。
- 縮みの予測が難しい場合がある
- 基本的に縮みは出し切れるとされていますが、生地の織り方やによっては、完全に縮みが出し切れない場合や、予測と異なる縮み方をする可能性もゼロではありません。
水通しのまとめ
麻の長襦袢の仕立てにおいて、水通しは「仕立て上がりの寸法を安定させ、長く快適に着用するために非常に重要な工程」です。デメリットもありますが、これらは適切な方法で行うことで最小限に抑えることができます。
時間と費用はかかりますが、後々のトラブルを防ぎ、着心地の良い長襦袢を作るためには、水通しは必須の工程と言えます。
麻の長襦袢の寸法の測り方と注意点
麻の長襦袢の寸法は、着心地と着姿に大きく影響するため、非常に重要です。特に麻は生地の特性上、着物との相性も考慮する必要があります。
長襦袢の寸法は、基本的に「上に着る着物の寸法」に合わせて決定します。しかし、麻の長襦袢を透ける夏の着物の下に着用する場合はいくつかの調整が必要です。
具体的な寸法の測り方と、特に注意すべきポイントを以下にまとめました。
1. 身丈(みたけ)
透ける素材の着物を着用する場合、長襦袢の身丈は非常に重要です。透けて見えてしまうので、短すぎると足首が露出しすぎて不格好に見えることがあります。
理想的な長襦袢の身丈は、着物の裾から見えない程度に短く、かつ、足のくるぶしがしっかり隠れるか、少し被るくらいが良いとされています。具体的には、以下の点がポイントになります。
- 足のくるぶしを隠す: 透ける着物の場合は、足首や素足が見えてしまうと野暮ったく見えがちです。長襦袢の裾が足のくるぶしまで届く、あるいは少し被るくらいの長さがあると、見た目のバランスが良くなります。居敷当てを付けていない場合は特に注意が必要です。また、皺がつきやすいのが麻素材の特徴ですが、正座等で着用後に皺が付くことで寸法が短くなることもあります。
- 着物の裾から見えない: 大前提として、長襦袢が着物の裾から飛び出して見えてしまうのは避けたいところです。着物を着付けた状態で、裾から長襦袢が見えない長さに調整しましょう。
- 着付け方で調整も可能: 長襦袢が少し長い場合は、着物を着付ける際に腰紐の位置を調整したり、極端に長い場合はおはしょりのように「丈上げ」をして調整することも可能です。夏物の透ける着物の場合は、あまり短すぎると足が見えてしまうため注意が必要です。
一般的に、長襦袢の身丈の目安としては、身長からマイナス30cm〜32cm程度と言われることが多いですが、これはあくまで目安です。ご自身の体形や補正の具合、そして実際に着用した際のバランスを見て調整することが大切です。
具体的な測り方としては、 首の後ろの骨(ぐりぐり)から真下に測り、足のくるぶしが隠れる程度の長さが目安となります。
失敗談
「透ける着物の裾から足が見えるのは、かっこ悪いな」と思う気持ちから、正絹の長襦袢の寸法よりも身丈を少し長くしたのですが、夏の補正は控えめにしていることもあり、着用時に思った以上に身丈が長くなってしまいました。
後身頃が着物の裾線と重なる感じになってしまい、動いたときに長襦袢の裾が着物からはみ出てしまう状態です。
しかし、仕立て直しはせずに着用時に腰のあたりで安全ピンで1か所止めて、裾から長襦袢が見えないようにして着用しています。「短くて足が見えるよりはいいかな」と思っていますが、ひと手間かかります。
このような失敗をしないためにも、季節によって補正を変えている場合は夏用の補正をした状態で身丈の確認をお試しください。
- 夏の着物着用時の補正で身丈を確認する
- 身丈が長い場合は着付け時の調整も可能
透ける夏の着物は長襦袢の身丈が短いと以外に目立ちます。ご自身での判断が難しい場合は専門家の意見も参考にすると安心です。
2. 裄(ゆき)
透ける素材の着物(夏物など)の下に着用する長襦袢は、裄、肩幅、袖幅についても、透けて見えたり、着物の袖口や振りから飛び出したりしないように、適切な寸法を選ぶことが重要です。
理想的な長襦袢の裄・肩幅・袖幅は、以下のようになります。
- 裄(ゆき)
- 着物の裄より少し短めが基本です。具体的には、着物の裄より2分(約0.75cm)程度短いのが理想とされています。
- これは、着物の袖口から長襦袢が飛び出してしまうのを防ぐためです。袖口から長襦袢の袖が見えると非常に目立ってしまいます。
- 長襦袢の裄が短いと、脇の部分から襦袢が見える可能性もありますが、着付けで調整できる範囲もあります。
- 透け感の強い夏着物の場合、着物の寸法よりも極端に短いと野暮な印象になる場合があります。
- 肩幅(かたはば)
- 着物の肩幅と同寸(同じ長さ)にするのが一般的です。
- 同寸にすることで、着物の振りから長襦袢が見えるのを防げます。
- 袖幅(そではば)
- 着物の袖幅よりも少し短めにするのが理想です。具体的には、着物の袖幅より2分(約0.75cm)程度短いのが一般的です。
- 袖幅を短くすることで、長襦袢の袖が着物の袖の中で収まりやすくなり、着物の袖口から飛び出すのを防ぎます。
裄丈のまとめ
- 長襦袢の裄: 着物の裄 - 約0.75cm
- 長襦袢の肩幅: 着物の肩幅 と同じ
- 長襦袢の袖幅: 着物の袖幅 - 約0.75cm
これらの寸法を目安に選ぶことで、透ける素材の着物もきれいに着こなすことができます。 ただし、これはあくまで一般的な目安であり、着物の仕立てやご自身の体型、着付け方によって多少の調整が必要になる場合もあります。実際に着用してみて、もし気になる点があれば、着付けの専門家や呉服店に相談してみるのも良いでしょう。
失敗談
マイサイズの夏用の長襦袢がなく、手持ちの綿の長襦袢を着用した時の経験です。
肩幅、袖幅ともに寸法が足りない長襦袢を着用したのですが、袖の振りから長襦袢が結構見えてしまいました。自分では見えにくい部分なので分かりにくいのですが、動いたときに他者に意外と分かってしまいます。
その当時は着物の振りの部分を1所か止めて長襦袢が飛び出さないように対処していました。この場合は、着用後に飛び出さないように留めることがポイントになります。
衿を抜く加減により振りの回転で前後差が出てしまうので、畳んだ状態で行うと着用時に歪みが出てしまいます。
全体的な注意点
- 水通しを行う: これが最も重要です。水通しを行わないと仕立て上がり後の自宅での水洗いにより寸法が小さくなってしまったり、歪みが出て着付けしにくくなる可能性があります。
- 各寸法の確認:夏の着物の補正の状態で寸法を確認する。活用中の長襦袢を基準として、プラスマイナスで考えると確認しやすいかと思います。
- 専門家に確認: 特に初めて麻の長襦袢を仕立てる場合や、細かな調整が必要な場合は、拘りが強い場合は仮縫いをして実際に着てみることで、着心地や着姿を確認し、修正することができます。ここまで厳重にしない場合でも、心配な場合は専門家に確認してもらうと安心できます。
これらの点に注意して、ご自身にぴったりの快適な麻の長襦袢を仕立ててください。
麻の長襦袢の仕立て方のまとめ
麻の長襦袢の仕立てにおいて、水通しは「仕立て上がりの寸法を安定させ、長く快適に着用するために非常に重要な工程」です。寸法では「身丈との裄(肩幅+袖幅)の寸法」が重要です。
特に透け感の強い着物の場合は注意が必要です。居敷当てを付けていないと長襦袢の身丈が短いと目立ちますし、袖口の寸法も意外と目につきます。
補正の具合など考慮して、実際の着用時の状態で寸法を確認することをお試しください。
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