一般的には、麻の長襦袢は夏物として扱われ、最も活躍するのは日本の蒸し暑い6月~9月頃の盛夏とその前後です。
しかし近年の気候変動の影響から、「暑がりな人なら通年で着用することも可能」という意見が増えています。
麻の長襦袢を1年を通して着用するかどうかは、個人の体感温度や、着用する着物の種類、そして麻の長襦袢の織り方や厚みによってかなり変わってきます。
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通年着用が可能になるポイント
- 個人の体感温度: 暑がりの方や、屋内での活動が多く暖房が効いている場所にいることが多い方にとっては、冬でも麻の襦袢が快適に感じられることがあります。
- 着物の素材と袷・単衣:
- 冬の袷(あわせ)着物: 袷の着物の下に着る場合、麻の襦袢は涼しすぎる可能性があります。しかし、着物が正絹などでかなり暖かい場合や、室内が暖かい場合は、麻の通気性がかえって快適に感じることもあります。
- 春・秋の単衣(ひとえ)着物: 単衣の着物は、正絹などの場合、比較的暖かみがあるため、麻の襦袢を合わせることで、汗をかきやすい季節の変わり目でも快適に過ごせます。特に春から夏への変わり目や、残暑の厳しい秋口などに重宝します。
- 麻の織り方:
- 平織りの麻襦袢: 一般的な麻の襦袢は平織りです。絽や紗のように透け感が強くないので、見た目にも夏らしさが強調されにくく、比較的長い期間着用しやすいです。
- 小千谷縮などシボのある麻: シボ(凹凸)がある麻は、肌との接触面積が少ないため、より涼しく感じられます。これは夏向きですが、通気性の良さから春先や秋口に着用する方もいます。
- 色柄:
- 色物の麻襦袢: 白の麻襦袢は夏らしい印象が強いですが、淡い色や中間色の麻襦袢を選ぶと、透け感が目立ちにくく、季節感を和らげることができます。これにより、春や秋など、比較的長い期間着用しやすくなります。
- 袖口や振りから見える長襦袢の色柄は、着物とのコーディネートの一部として楽しめます。
注意点
- 真冬の屋外: 流石に真冬の屋外など、外気温が非常に低い状況では、麻の襦袢は寒く感じられることが多いです。その場合は、通常利用する正絹の襦袢の保温性の高い素材を選ぶのが一般的です。
- 透け感: 麻の襦袢は、着物の素材や光の当たり方によっては透けることがあります。特に夏以外の時期に着用する場合は、着物との組み合わせや、着物との添い、足さばきが気にならないか確認することをおすすめします。
麻の長襦袢は夏のイメージが強いですが、工夫次第で着用期間を長くすることは十分に可能です。特に近年は気候変動で夏が長くなったり、冷暖房の効いた屋内で過ごす時間が増えたりしているため、「通年で麻の襦袢を愛用している」という方も珍しくありません。ご自身の体質やライフスタイルに合わせて、柔軟に選んでみてください。
体感以外のメリット
静電気が発生しにくい: 共に洗える利点のあるポリエステルなどの合成繊維に比べ、天然繊維である麻は静電気が発生しにくく、着用時の体へのまとわり感や足さばき、着脱時の不快感が少ないです。
カビが生えにくい: 吸湿・速乾性に優れているため、湿気がこもりにくく、カビの発生を抑える効果があります。
麻の襦袢の快適さ:静電気が発生しにくい
麻襦袢の快適さにおける「静電気が発生しにくい」という点について詳しく説明します。
麻襦袢の快適さの重要な側面は、「静電気が発生しにくい」という特性です。これは、特に乾燥した季節や、化繊の多い衣類と重ね着する際に、着用者にとって大きなメリットとなります。
なぜ麻は静電気が発生しにくいのか?
静電気は、異なる素材同士が摩擦することで電荷のバランスが崩れ、帯電することによって発生します。特に、水分含有率の低い合成繊維(ポリエステル、アクリルなど)は帯電しやすい傾向があります。麻が静電気を発生しにくい理由は以下の通りです。
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高い吸湿性:
- 麻は、他の多くの繊維、特に合成繊維と比較して、非常に高い吸湿性を持っています。常に適度な水分を繊維内部に含んでいるため、電荷が溜まりにくく、発生した電荷も空気中の水分を通して速やかに放電されます。
- 繊維が水分を帯びていることで、摩擦によって電荷が一方の物質に移動しても、すぐに元のバランスに戻ろうとする働きがあります。
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天然繊維であること:
- 麻は天然繊維であり、人工的に作られた合成繊維とは分子構造が異なります。一般的に、綿や麻などの天然繊維は、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維に比べて静電気が発生しにくい性質を持っています。
- これは、天然繊維が持つ適度な導電性によるものと考えられています。
静電気が発生しにくいことが快適さにつながる理由
- 不快なパチパチ感の解消: 静電気による「パチパチ」とした痛みや不快な刺激がほとんどないため、着脱時や着用中のストレスが軽減されます。
- 肌へのまとわりつきの防止: 静電気を帯びた衣類は、肌や他の衣類にまとわりつきやすくなります。麻襦袢は静電気を帯びにくいため、着物や肌に張り付くことなく、常にサラリとした肌離れの良い状態を保てます。これにより、通気性が損なわれず、快適な着心地が維持されます。
- ホコリやゴミの吸着防止: 静電気は、空気中のホコリや花粉、小さなゴミなどを引き寄せやすい性質があります。麻襦袢は帯電しにくいため、これらの異物が付着しにくく、清潔な状態を保ちやすいというメリットがあります。これは、特に着物という清潔感が求められる装いにおいて重要です。
- 着物と襦袢の相性: 着物は絹など比較的静電気の発生しにくい素材が多いですが、冬場の乾燥時や化繊の裏地が付いた着物などと合わせる場合でも、麻襦袢が静電気を帯びにくいことで、着物と襦袢が過度に貼り付くのを防ぎ、着崩れや不快感を軽減します。
このように、麻襦袢の「静電気が発生しにくい」という特性は、着用時の物理的な不快感を軽減するだけでなく、着姿の美しさや清潔感を保つ上でも、縁の下の力持ちとして快適さに貢献しています。
なぜ麻襦袢はカビが生えにくいのか?
麻襦袢の快適さの要素として、「カビが生えにくい」という点は、特に日本の高温多湿な気候において、衣類の保管や衛生面で非常に大きなメリットとなります。これは、麻が持つ複数の特性が複合的に作用して実現されます。
カビは、高温多湿な環境と栄養源(皮脂、汚れなど)が揃うと繁殖しやすくなります。麻がカビにくいとされる主な理由は以下の通りです。
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優れた吸湿性・速乾性:
- 麻は、抜群の吸湿性で汗や空気中の水分を素早く吸い取ります。そして、吸い取った水分を驚くほどの速さで発散させる「速乾性」に優れています。
- この特性により、襦袢が湿った状態になる時間が極めて短く、カビが繁殖するために必要な「湿度」を効果的に低減します。常にドライな状態を保つことで、カビの発生を根本から防ぎます。
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高い通気性:
- 麻の繊維は比較的太く、織り方によって生地全体に空気の通り道が多く生まれます。この高い通気性により、襦袢の内部に熱や湿気がこもりにくく、空気が常に循環します。
- 湿気が滞留しない環境は、カビの成長を阻害する重要な要因です。
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天然の抗菌作用(補助的効果):
- 麻繊維に含まれる天然のペクチンなどの成分には、抗菌作用があると言われています。この抗菌作用は、カビの繁殖だけでなく、雑菌の増殖も抑えることで、カビの成長に必要な微生物環境を不利にする補助的な役割を果たします。
カビが生えにくいことが快適さにつながる理由
- 衛生的な維持: カビは不快な臭いを放つだけでなく、アレルギーや肌荒れの原因となることもあります。カビが生えにくいことで、麻襦袢を常に清潔で衛生的な状態に保つことができ、安心して着用できます。
- 保管のしやすさ: 湿気の多い季節でもカビの心配が少ないため、収納時の管理が比較的容易になります。他のデリケートな衣類と一緒に保管する際の安心感も高まります。
- 手間とコストの削減: カビが発生すると、除去作業に手間がかかったり、最悪の場合は処分せざるを得なくなったりします。カビが生えにくい特性は、そうした手間や余計なコストを削減することにつながります。
- 精神的な安心感: 大切な襦袢にカビが生える心配が少ないことは、着物愛好家にとって大きな精神的な安心感をもたらします。
このように、麻襦袢の「カビが生えにくい」という特性は、その吸湿性、速乾性、通気性の高さがもたらす副次的ながら非常に重要なメリットであり、着用時の快適さだけでなく、長期的な衛生維持と管理のしやすさにも貢献しています。
まとめ
暑さ対策以外にも静電気の防止や、お手入れのしやすさ、カビの発生リスクの低さなど、麻の長襦袢にはたくさんのメリットがあります。
実際に暑がりや汗かきの方では、「1年中麻襦袢を使っていますよ」という方も多いです。
年齢による体質の変化から「暑さを感じやすくなってきた」という方も多いのではないでしょうか。
そのような時は、「こうあるべき」という考えよりも、ご自身の感覚を優先して着物をより快適に、より楽しむことが出来る方法を選ぶことをお試しください。
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