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もしもの時も慌てない!着物についたシミ汚れの種類別応急処置

大切な着物にうっかりシミをつけてしまったら、慌てて焦ってしまいますよね。

でも、シミの種類を正しく見分けて適切な応急処置をすれば、シミが広がるのを防ぎ、その後の悉皆や専門のクリーニングをより効果的にすることができます。

まずは冷静になって、慌てずに対処しましょう。

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 水溶性のシミ汚れ(ジュース、コーヒー、お酒など)

水溶性のシミ汚れの特徴

水溶性の汚れには、以下のような特徴があります。

  • 水に溶けやすい
    • 名前の通り水と結びつきやすい性質を持っています。そのため、水やお湯、水を含む洗剤で比較的簡単に落とすことができます。
    • 醤油、ジュース、コーヒー、お酒、汗、尿などがこれにあたります。
  • 放置すると落ちにくくなる
    • 新鮮なうちであれば水だけでも落ちやすいですが、時間が経つと繊維に定着して落ちにくくなります。特に、糖分やタンパク質を含む汚れは、時間が経つと変質してしまい、水だけでは落とせなくなることがあります。年数がたつと汚れが浮き出てくる場合もあるので注意が必要です。
  • 見た目ににじみやすい
    • 水が繊維に浸み込むため、シミの輪郭がくっきりと滲んで見えることが多いです。生地の種類によっては、水分を吸って膨らんだり、色が濃く見えたりすることもあります。
  • 熱を加えると定着することがある
    • 特に血液や汗などのタンパク質を含む汚れは、熱を加えるとタンパク質が凝固してしまい、かえって落としにくくなるため注意が必要です。
    • アイロンがけは汚れを定着させてしまう場合があるので注意が必要です。

水溶性のシミ汚れの付きやすい場面

水溶性のシミ(ジュース、コーヒー、お酒など)は、日常生活のさまざまな場面でつきやすいです。特に着物の場合は袖の扱いなど洋服と比べて慎重な動きが求められるため、次のような場面でうっかりシミをつけてしまうことがあります。

  • 食事の席:
    • お茶会や会食の場で、飲み物を口元に運ぶ際にこぼしてしまう。
    • グラスやカップを置く際に、水滴が垂れてしまう。
    • 汁物や醤油、ソースなどをこぼしてしまう(これらは混合性のシミになることもあります)。
  • パーティーやレセプション:
    • 立ったままグラスを持って話しているとき、不意にぶつかって飲み物をこぼしてしまう。
    • ビュッフェ形式の食事で、トレイを運ぶ際に飲み物が揺れてこぼれる。
  • 式典やイベント:
    • 緊張していると、うっかり飲み物をこぼしやすくなることがあります。
    • 特に、水分を多く含むものを扱う場面では注意が必要です。
  • 雨の日:
    • 雨に濡れて、着物に「水シミ」ができることがあります。これは、雨水に含まれる大気中の汚れ(排気ガス、花粉など)や、着物の染料・加工剤が水に溶け出してできるものです。

これらのシミは、新鮮なうちに水で対処すれば比較的落としやすいですが、時間が経つと繊維に定着してしまい、専門のクリーニングが必要になります。特に、色素の強い飲み物(赤ワインや抹茶など)や、血液、汗などのタンパク質を含むシミは、放置すると非常に落としにくくなるので注意が必要です。

水溶性のシミ汚れの取り方

水に溶けやすいシミは、比較的対処しやすいのが特徴です。

出先で汚した場合、すぐに何とかしようと思ってしまいますが、水分をふき取るまでにして、自宅に帰ってから処置をするほうが失敗が少ないです。

  • 用意するもの: 乾いたタオル、ハンカチ、ティッシュなど、水、あればベンジンやリグロイン
  • 対処法:
    1. まず、乾いたタオルやティッシュでシミの水分を優しく吸い取ります。絶対にこすらないでください。(出先ではここまでで終了します)
    2. 次に、別の乾いたタオルをシミの真下に敷きます。
    3. 別のきれいなティッシュや布に少量の水をつけ、シミの輪郭の外側から中心に向かって、少しずつ叩くようにして水分を移していきます。
    4. 水だけで落ちにくい場合は、ベンジンを少しつけた布で同様に優しく叩きます。ただし、ベンジンは生地によっては色落ちの原因になることもあるため、目立たない場所で試してからにしましょう。

油溶性のシミ(食用油、バター、ドレッシングなど)

油溶性のシミ汚れの特徴

油溶性のシミには、以下のような特徴があります。

  • 水に溶けにくい
    • 水分とは性質が異なるため、水だけではシミが落ちません。これは、油が水をはじく性質を持っているためです。
    • 食用油、バター、ドレッシング、ファンデーション、口紅、機械油などがこれにあたります。
  • 時間が経つと酸化して黄ばむことがある
    • シミがついたまま放置すると、油分が酸化して黄ばみに変化することがあります。この状態になると、さらに落としにくくなるため、早めの対処が重要です。
  • 油に溶けやすい
    • 水には溶けませんが、油性の溶剤(油分)には溶ける性質を持っています。そのため、ベンジンやクレンジングオイル、食器用洗剤など、油分を分解する作用のあるもので対処するのが効果的です。
  • 熱で溶けることがある
    • 油の種類によっては、熱を加えることで溶けて落としやすくなるものもあります。例えば、食用油や動物性の油(バターなど)は、ぬるま湯で対処すると効果的な場合があります。ただし、着物の場合は熱で生地が傷む可能性もあるため、注意が必要です。
  • 見た目が輪郭がはっきりしている
    • 水分と違って生地ににじみにくいため、シミの輪郭が比較的はっきりしていることが多いです。べったりと付着しているように見えることもあります。

油溶性のシミ汚れの付きやすい場面

油溶性のシミは、油分を含む液体や固形物が原因でつきます。着物の場合は、特に次のような場面で注意が必要です。

  • 食事の席:
    • 天ぷらや唐揚げ、揚げ物などを食べる際に、油が飛んでしまう。
    • バターやマーガリン、ドレッシング、マヨネーズなどが付着する。
    • カレーやミートソース、シチューなど、油分を多く含む料理をこぼしてしまう。
    • サラダにかけたドレッシングは意外に飛ばしやすいので注意が必要です。
  • 着付けや化粧をする・されたとき:
    • ファンデーションや口紅、グロスなどの化粧品が、着物の襟元や袖口、胸元についてしまう。
    • 特に、着付けをしてもらうときに着付け師の方の課をが着物に触れたときに汚れが付いたり、自分での化粧直しをしたりする際に、うっかり触れてしまいがちです。
  • 人との接触時:
    • 満員電車や混雑した場所で、他人の服やバッグについた油分が移ってしまう。
    • 飲食店などで、テーブルや椅子についた油汚れが着物の裾についてしまう。
  • 自分で作業する場面:
    • 料理をする際に、油はねが飛んでしまう。
    • 自転車のチェーンや車のパーツを触った際に、機械油がついてしまう。

油溶性のシミは、水に溶けないため、水でこすっても広がるだけで取れません。時間が経つと酸化して黄ばんでしまい、さらに落としにくくなるため、ついた直後のできるだけ早い対処が重要になります。

油溶性のシミ汚れの取り方

油に溶けるシミは、水だけでは落ちません。

  • 用意するもの: ベンジンやリグロイン、乾いたタオル
  • 対処法:
    1. 乾いたタオルをシミの真下に敷きます。
    2. ベンジンを別のきれいな布やガーゼにたっぷり含ませ、シミの周りの生地と馴染ませるように、外側から中心に向かって円を描くように優しく叩きます。
    3. シミが薄くなるまで何度か繰り返してください。

混合性のシミ(ファンデーション、口紅など)

混合性のシミ汚れの特徴

混合性のシミには、水溶性の成分と油溶性の成分の両方が含まれているため、両方の性質を併せ持っているのが特徴です。

具体的には、以下のような特徴があります。

  • 水だけでは落ちない
    • 油分が含まれているため、水洗いだけではシミが落ちません。表面の水溶性の成分が取れても、油分が繊維に残ってしまい、シミが薄く残ってしまったり、時間が経つと黄ばみに変化したりすることがあります。
    • 例:ファンデーション、口紅、カレー、ミートソース、ドレッシング、牛乳など
  • 油溶性の溶剤で先に油分を落とす必要がある
    • 水分に加えて油分が含まれているため、いきなり水で洗うと油分が繊維の奥に入り込み、かえって落としにくくなることがあります。
    • まずはベンジンなどの油溶性の溶剤で油分を分解し、浮き上がらせてから、水溶性の成分を洗い流すという「二段階の処置」が効果的です。
  • 色素が含まれていることが多い
    • ファンデーションや口紅、カレーなどは、顔料や香辛料など色素が含まれているため、油分を落とした後も色素が残ることがあります。
    • このような場合は、専門のクリーニング店に依頼して、色素を分解する特殊な処置をしてもらう必要があります。
  • 時間が経つと酸化して黄ばむ
    • 油溶性のシミと同様、時間が経つと油分が酸化して黄ばみに変化することがあります。この黄ばみは非常に頑固で、家庭での処置ではまず落とすことができません。

水溶性・油溶性どちらかのシミに見えても、その原因に油分と水分が両方含まれている場合は「混合性のシミ」である可能性が高いです。例えば、コーヒーでもミルクや砂糖が入っていると混合性のシミになります。そのため、原因を特定し、適切な処置を行うことが重要です。

混合性のシミがつきやすいシチュエーション

混合性のシミは、水溶性の汚れと油溶性の汚れが両方含まれているため、日常生活の様々な場面でつきやすいです。特に着物の場合は、袖が長く、身につけている時間が長いため、不意のタイミングでついてしまうことがあります。

  • 食事の席:
    • カレーやミートソース、シチューなどを食べるとき。これらはルーやソースに油分、そして水分と色素の両方が含まれています。
    • ドレッシングマヨネーズなどが、サラダからこぼれてしまう。食べるときに飛ばしてしまう。
    • 焼肉のタレが跳ねてしまう。タレは醤油や果汁などの水溶性成分と、肉汁や脂などの油分でできています。
    • ラーメンのスープが跳ねる。特に背脂などが浮いているラーメンは、水溶性と油溶性の両方が含まれています。
  • 飲み物を飲むとき:
    • カフェオレ、ミルクティーなどの乳製品を含む飲み物。これらは水分と乳脂肪分が含まれています。
  • 化粧をする・化粧直しをする時:
    • ファンデーションや口紅、グロスが、着物の襟元や袖口、胸元についてしまう。これらは油分をベースに、水分や顔料が含まれています。
  • 日常生活の中で:
    • 長時間の着用による皮脂汚れ: 襟元や袖口は、汗(水溶性)と皮脂(油溶性)が混ざり合って、時間とともに汚れが定着し、黄ばみに変わることがあります。

混合性のシミは、一見すると水っぽい汚れに見えるため、水だけで対処しようとしがちです。しかし、油分が残ってしまうと時間が経って黄ばみに変わることがあるため、ついた汚れの原因をよく見極めることが大切です。

混合性のシミ汚れの取り方

油分と水分が混ざったシミは、両方の性質を考慮して対処します。

  • 用意するもの: ベンジンやリグロイン、乾いたタオル、水
  • 対処法:
    1. 油溶性のシミと同様に、まずベンジンを使って油分を浮き上がらせるように優しく叩きます。
    2. 油分がある程度取れたら、次に水を含ませた布で水分を叩き取ります。
    3. この作業を交互に行うことで、シミを薄くすることができます。

応急処置の注意点

  • こすらない: シミをこすると、繊維の奥に入り込んで取れにくくなるだけでなく、生地を傷めてしまいます。
  • 熱を加えない: ドライヤーの熱やアイロンはシミを定着させてしまうため、絶対に避けてください。
  • 自己判断での染み抜き剤の使用は避ける: 市販の染み抜き剤は着物の素材によっては使えないものも多く、かえって状態を悪化させるリスクがあります。

これらの応急処置はあくまで「その後のクリーニングを楽にするための処置」です。シミが完全に消えたように見えても、プロの着物クリーニング店に早めに相談することをおすすめします。

また、ベンジンやリグロインを使うのに抵抗がある場合は、汚れを吸い取るまでにとどめて、すぐに購入された呉服屋、悉皆、着物専門のクリーニング店へ相談すると良いでしょう。

着物についたシミの種類別応急処置 まとめ

水溶性、油性、混合性など汚れによって処置が変わりますが、まずは汚れの種類を正しく見分けることが大切です。

  • 出先では、汚れを吸い取るまでにおさめ、自宅に帰ってから続きを行う。
  • シミ汚れの種類、原因に合わせた適切な応急処置をする。
  • 専門家へクリーニンを依頼するときに、汚れた時の場面や原因を伝える。

ことで、着物を傷めることなく、シミ汚れを綺麗にすることができます。

 

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