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単衣や薄物や麻の着物に居敷当ては必要か 付けるor付けない どっち派?

2種類の単衣仕立の居敷当ての生地の種類と付ける範囲の比較

単衣や薄物、麻の単衣仕立の着物の場合、「居敷当て」というものを付ける場合があります。

実際に、麻、上布の着物を仕立てるにあたって、「麻の着物には居敷当ては必要ないですよ」とアドバイスを受けたことをきっかけに、「どうして麻の着物には居敷当てが必要ないのか?」と疑問を感じました。

今回は、居敷当てのメリット、デメリット、必要性や敢えていらない場合などについて考えてみました。

 

居敷当ての素材も、付ける範囲も様々です。

居敷当てとは

居敷当てとは、お尻の部分の生地にかかる力が、縫い目に集中しないように両脇に分散させ、着物の縫い目から裂けないようにするため補強の役割があります。

また、下着などの透けを防止してくれる役割があります。

 

普段着として着物を着る機会が少なくなってきましたが、お茶会やお筝や三味線などの演奏会の場合では動きが激しいため、頻繁にお尻の部分に力がかかり、「きせ」をかけてある部分(縫い目)が広がったり、ひどい場合は避けてしまったりすることがあります。

それを防ぐために表の着物生地を補強してくれるのが居敷当てで、単衣の着物を仕立てる際に、お尻にあたる部分に縫い付ける当て布のことをいいます。

昔の着物には補強目的ということで、一番力の加わるお尻の部分に居敷当てが縫い付けられていましたが、縫いつけた縫い目が表に響いて、お尻の部分が不恰好になることもあり、最近では広巾の生地を腰の縫いこみ部分 から、裾ギリギリまで大きく付けることが多くなっています。

着物の生地を守りながら、見た目の美しさも追求した居敷当てになっています。

また、居敷当ての生地を共布にすると、お手入れした際に同じ収縮率で安心です。

 

居敷当てを付ける範囲も、下半身の後ろ身頃の半分のみや、後ろ見頃全体の部分に付ける場合があります。

居敷当てのメリット

居敷当てのメリットは、着物の縫い目(きせ部分)が広がったり裂けるのを防止する。

また、下着などの透けを防止してくれる役割があります。

居敷当てのデメリット

居敷当てのデメリットとして、布が1枚増えるので暑くなるということです。

また共布でない場合は、表地との収縮率が違うことで、お手入れの時に注意が必要なことです。

居敷当ては必要?あなたなら、付ける?付けない?

居敷当てに対しての考え方は、着物の生地や色目、着用頻度、どのような場面で着物を着るかによって様々な意見があります。

付けない派の意見

少しでも涼しくしたいから、居敷当てはつけないことにしているわ。

居敷当てを付けると腰から下だけが白くなるから、付けないわ。

長襦袢の透ける色の統一感を出すために、薄物の着物には居敷当ては付けないわ。

色襦袢の色や柄を紗袷のように楽しみたいから、薄物の着物には居敷当ては付けていないわ。

付ける派の意見

着物の生地に負担を掛けたくないから単衣はもちろん、薄物や麻の着物にも必ず居敷当てを付けてもらっているわ。

しわ予防や汗対策として、居敷当ては付けているわ。

お茶を習っていて、お茶会の時は運動量の多いいから居敷当ては必ず付けるわ。

着物の足さばきをよくしたいから、居敷当ては付けておきたいわ。

単衣の着物の居敷当て

昔の単衣の着物には、居敷当てを付けずに縫い端の処理として背伏せを付けて仕立てられることが多かったようです。

現在は単衣の正絹の着物には、居敷当てを付けて仕立てられるとこが多いです。

 

私の場合も、袷の着物を単衣に仕立て直してもらう時に「正絹の場合は生地の補強のために居敷当てを付けることをお勧めします。」とアドバイスをいただきました。

居敷当てを付ける場合は「居敷当てを付けてください」とお願いする必要があり、居敷当て代が別途必要になります。

 

ポリエステルなどの生地の場合は、生地自体が丈夫なため居敷当ては必要がないと考える場合が多いです。

居敷当てのデメリットとして、生地が1枚多くなることで必然的に暑くなるので、必要がないのであれば省いた方がよいように思います。

薄物の着物の居敷当て

紗や絽などの薄物の着物の場合、生地の特徴や色目によっても透け感が異なるので、居敷当てを付けるか付けないかは考えなくてはいけません。

個人的には、紗や絽などの透け感が強い着物生地の場合は、上半身との色目の差が大きく出てしまうので、居敷当ては付けないほうが良いように感じています。

特に紗の生地は透け感が高いので、居敷当ては付けないほうが美しいように思います。

 

上等の居敷当てで表生地になるべく影響しないような生地もあるので、目立たせずに居敷当てを付けたい場合は、信頼できるお店に相談することをお勧めします。

 

薄物の着物の場合、長襦袢の色や文様をわざと透けさせて紗袷のようにお洒落を楽しむ場合は、居敷当てを付けてしまうとその部分だけ長襦袢が見えなくなってしまうので、付けないという選択になります。

麻の着物の居敷当て

麻の着物の居敷当ては個人の好みや用途によりいろいろな考え方があります。

縫い目に力が入るのは必然なので麻や上布、芭蕉布の着物にも居敷当てを付ける人もいます。

その場合は、居敷当ての生地も上布の生地を選んだりと、涼しさやお手入れにも気を使っているようです。

 

麻の着物をお仕立てする場合は、「居敷当ては必要ないですよ」といわれる場合や、確認することもなく居敷当てなしでお仕立てする場合があるので、居敷当てを付けたい場合はお仕立て前に伝えておく必要があります。

単衣、薄物、麻の着物の居敷当て

自分でお仕立てをするようになって、細かなことに気が付くようになりましたが、以前はほぼお任せ状態でした。

そこで、手持ちの単衣や薄物、麻、上布の着物の居敷当てがどのようになっているか確認したところ、このようになっていました。

 

単衣・・・居敷当てが付いていたり付いていなかったり。

付下げや訪問着は居敷当てが付いているが、小紋には付いていないものが多かった。

薄物・・・全て居敷当てが付いていない。背伏せのみのお仕立て。

麻、上布・・・全て居敷当てが付いていない。背伏せのみのお仕立て。

 

夏の着物の中でも、比較的丈夫そうな単衣の生地には居敷当てが付けてあり、繊細な生地の薄物や上布には居敷当てが付けていないことが不思議に感じました。

生地の補強と見た目の美しさの、せめぎ合いですね。

 

自分でお仕立てする場合は、居敷当てを付けるか確認されることが多いので、単衣の着物の場合は付けてもらいようにしています。

実際の居敷当ての付ける範囲や生地の比較

2種類の単衣仕立の居敷当ての生地の種類と付ける範囲の比較

どちらも1級和裁師のお仕立てですが、居敷当ての付ける範囲や裾の始末の仕方が異なります。

上のお仕立は後ろ見ごろ全体に居敷当てが付いていて、裾の部分は少し距離があります。

下のお仕立ては後ろ見ごろの左右半分までに居敷当てが付いていて、裾の縫込みの中に生地が入れ込んであります。

後ろ見ごろの左右半分の所で縫い付けてあるので、表に糸がポツポツと渡っていますが、あまり目立たないので気になりません。

紗のような居敷当て

単衣仕立の居敷当ての生地の種類、紗のような居敷当て

「良い居敷当てを使っておいたよ」と言われ、付いていたのがこちらの紗のような居敷当てです。

透け感のある表生地ですが、表生地に白く響かず優秀な居敷当てだと思います。

このような紗の居敷当ては初めてでした。

通常の羽二重の居敷当て

単衣仕立の居敷当ての生地の種類、通常の羽二重の居敷当て

袷仕立で着ることも出来る生地です。

こちらには、通常の羽二重の居敷当ての生地が使われています。

居敷当てを付けない場合の工夫の仕方

夏の着物は白の長襦袢がすっきりとして爽やかで素敵ですが、襦袢の模様や色目を変えることで、同じ着物をいろいろな雰囲気で楽しむのもお洒落だと思います。

その場合は居敷当ては付けないことになります。

しかし、着物の生地を傷めるのをなるべく避けるための工夫として、長襦袢に居敷当てを付けて着用するのも1つの解決方法です。

長襦袢に居敷当てを付けることで、各着物に居敷当てをつける必要がないこともメリットです。

しかし、よく考えてみると、この方法が本当に着物の生地を守ることに効果的かというと疑問があります。

その着物の生地自体に補強しない事には、「きせ」は広まってしまうような気がしますが、いかがでしょうか?

ですが、足元の透け予防にはなるので、気になる場合は何もしないよりは良いような気がします。

 

また、着付け時の工夫としてですが、私は着付けのときにあまりきつく巻きつけないようにしています。

これは、居敷当てが有る無しに関わらず、「着物は結構お尻まわりのラインが目立つ」ことが気になるからです。

着物を着ている時は、後ろ姿を観察されることが多いと思うので、ヒップラインは要注意です。

 

因みに居敷当てが付いていない着物には、後付けすることが出来ます。

お裁縫が得意な人は、自分で付けることもできるようなので、チャレンジしてみてください。

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