2015年に北陸新幹線が開通して4年が過ぎ、金沢駅の1日の利用者は900万人に迫る勢いです。
金沢観光に北陸新幹線を利用する場合も多いと思いますが、北陸新幹線金沢駅を利用する際には金沢駅改札口近くにある待合室の利用をおすすめします。
以外に知られていないのですが、金沢駅改札口内の中2階ホームにある待合室には、金沢の伝統工芸の全32品目、237作品が丸い小窓を使って可愛らしく展示してあります。
金沢観光の締めくくりとして、金沢の伝統工芸の鑑賞を存分に楽しむことが出来る隠れ家的存在のスポットです。
今回は、伝統工芸好きにはたまらない、おすすめの金沢伝統工芸の「百工の間」小窓コレクションの一部をご紹介します。
北陸新幹線金沢駅の待合室内の金沢伝統工芸コレクション
金沢の伝統工芸の全32品目、237作品が丸い小窓を使って可愛らしく展示してあります。
今回は加賀繍の全13品をご紹介します。
「桜の花丸文様」「水仙」
「桜の花丸紋」
花丸紋は古典的な意匠で、植物を円形に象る形式をいいます。
定番の印象の桜の花丸紋です。
大きさを背紋サイズに小さくして、加賀紋のデザインとしてもよさそうですね。
桜の花びらの暈しが素敵な作品です。
「水仙」
江戸時代に徳川2代将軍秀忠公の次女珠姫が前田家に御輿入れの際の品の小袖「白紋繻子地水仙唐花丸文様繍小袖」に描かれていた文様の1つです。
繍疋田の技法とは違う方法を用いて疋田を表現してある繍が面白い作品です。
丸みをおびた水仙の花や葉がかわいらしい印象を与えていますが、花や葉の一部を金駒埋めを用いることで華やかで豪華な印象を与えていると思います。
「FlowerDance」「アオイガイ」
「flowerdance」
刺繍糸での繊細な暈しの表現や絹の艶やかさが感じられる作品です。
こちらの繍糸は細い刺繍糸を使用していて、緻密で繊細な繍でありながら若々しくかわいらしい印象を与えているのが特徴的です。
刺繍糸が細いので自然な暈しが綺麗な作品です。
「アオイガイ」
珠洲の海に生息する「アオイガイ」は、貝殻コレクター垂涎の存在です。
この貝殻はタコの雌が卵を育てるために腕から出した分泌物で作られています。
2つの合わせた形が葵の葉に似ていることからこの名がつけられ、水の中では半透明ですが乾く紙のような質感になります。
異なる色の糸と糸の境目を「針目継ぎ」といいますが、その「針目継ぎ」が綺麗な作品だです。
個人的に繍の雰囲気が好きな作品です。
「白米の千枚田」「雪持ち椿の花丸文様」
「白米の千枚田」
この作品は他の加賀繍とは全く異なった雰囲気の作品で、明治工芸での刺繍絵画のような作品です。
海面や水が張った棚田の表面に、沈む夕日の光が差し込む風景が美しい誌的な作品です。
この作品を作るにあたっての、刺繍糸の色の選択をどのように考えるのか気になりました。
「雪持ち牡丹の花丸紋」
雪持ちの雪の表現がポイントの作品です。
通常のように牡丹の花を繍ってから、その上に雪を繍ことで雪の透明感を表現しています。
また、牡丹の花びらの色の変化でより奥行きを感じる作品になっていると思います。
「雪吊り松文様」「宝尽くし」
「雪吊り松文様」
加賀繍の色目を明るくアレンジした刺繍糸を用いて繍われた作品です。
地繍で埋め尽くした上の金糸の重なりや、繍疋田の重なりが重厚な厚みを感じさせる作品になっています。
雪国ならではの雪吊りの景色ですが、真っ先に金沢の兼六園の松の雪吊りの景色が目に浮かびます。
松の幹の根本にある積もった雪の様子が、素敵な演出です。
この雪吊りのデザインが雪国に住む人には、ツボに感じる作品だと思います。
「宝尽くし」
宝尽くし文様の中の、七宝、分胴、隠れ蓑が描かれています。
組紐の付いた隠れ蓑の中には、沙綾形や小さな花々が繍されていて豪華な隠れ蓑になっています。
古典文様を、上品な色使いで表現された作品です。
「鳳凰」「波に鶴」
「鳳凰」
室町時代初期に京都から金沢に刺繍の技術が伝えられ、仏前の打敷や僧侶の袈裟に施されました。
打敷の代表的な図案が「鳳凰」のモチーフになります。
肉入れの技法で立体感を出し、刺し繍の技法で暈しを表現し、金糸を用いて駒繍を施して、北陸新幹線開通を祝い伝統工芸の発展の願いが込められている作品です。
「波に鶴」
金沢から全国へ発信するという思いがこもった、縁起の良い鶴の図柄が描かれています。
鶴が飛び立つ様子を七種類の金糸を使って、駒繍い、まつり繍い、菅繍いなどで表現してあります。
様々な金糸を用いて繍われら素敵な作品です。
「七宝文様」「市松文様」
「七宝文様」
この七宝文様は魚眼レンズで覗いたような立体的なデザインになっているところが面白く、金糸の力強さとデザインがうまく咬み合った作品です。
あえて歪んだ円形をきちんと象らなくてはいけないので、大変そうです。
「市松文様」
市松模様を、金糸と銀糸の駒繍で表現してあります。
単純な碁盤目の文様によって金糸と銀糸の美しさが最大限に生かされています。
異なる色の糸を使って綺麗な直線を描くのは、技術が必要です。
金駒の本数のバランスを均等に保つのが難しいと思いました。
やっぱり金駒繍は迫力がありますね。
「加賀友禅・由水十久」
加賀友禅作家の中でも人気の高い、由水十久先生の作品です。
もちろん加賀繍ではありませんが、由水十久先生の作品は特別枠と言うことでご紹介します。
江戸の加賀藩には大名の火消しの役割である加賀鳶がありました。
由水十久先生の作品は、童子が纏っている着物の緻密な文様も楽しみですが、こちらの作品の加賀鳶の衣裳には、消防に因んで雨雲と雷文様が描かれています。
由水十久先生の作品は糸目がとても細く、なおかつすっきりと均一なところが素晴らしいいです。
人体の構造をきちんと考慮した人物の描写や、童子のふっくらとした顔立ちのかわいらしい表情が魅力的です。
加賀繍以外の金沢伝統工芸
今回こちらには、加賀繍の作品をご紹介しましたが、着物関係では、この他に「加賀友禅」「牛首紬」「能登上布」などの作品があります。
「九谷焼」「輪島塗」「金沢漆器」などの有名な金沢の伝統工芸以外にも「箏」「三弦」「太鼓」などの楽器類や、「加賀毛針」「加賀水引細工」「七尾和ろうそく」などの、あまり知られていないような金沢の伝統工芸も展示されています。
全32品目、237作品が丸い小窓を使って可愛らしく展示してあります。
終りに
2015年3月14日に北陸新幹線が開通して開業前の在来線特急の利用者数と比較すると、金沢駅の利用者数は、 1年目で3倍、3年目で2.7倍を維持し、お隣の富山県内の富山駅、新高岡駅、黒部宇奈月温泉駅3駅を合わせた利用者数の2倍以上の数字でした。
新幹線開業4年目に入ってからも金沢市内でのホテル開発が進んでおり、金沢の新幹線バブルはもう少し続きそうな様子です。
帰路時に北陸新幹線の駅ホーム内で新幹線の発車時間を待つこともあると思います。
そのような時は、是非、北陸新幹線金沢駅の改札口を入ってエスカレーター上の左手近くにある待合室の中の金沢の伝統工芸を鑑賞してください。
帰路では何かと慌ただしく、駅ホーム内の待合室を利用する時間の余裕がない場合があるかもしれません。
到着時に新幹線の改札口を出る前に、はやる気持ちを抑えてちょっと覗いてみるのも良いかもしれませんね。
お着物好きな方や工芸好きな方にはとても喜ばれる展示なので、興味のある方(無い方も)は是非お立ち寄りください。
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