宮古上布や越後上布など、上布といえば細い苧麻(ちょま)の繊維で織り上げた麻織物のことをいい、能登上布や小千谷などはラミーの繊維で織り上げた麻織物のことをいいます。
着物の世界では「苧麻(ちょま)」と「ラミー」は区別して認識されていますが、「着物の世界」と「一般的な衣料品」とでは「苧麻(ちょま)」の認識が違うようです。
今回は「麻について」「苧麻(ちょま)とラミーの違いについて」まとめてみました。
麻とは?
衣料用に使われている麻の繊維といえば、苧麻(ラミー)白く絹のような光沢や亜麻(リネン)薄く黄色がかった白色、大麻(ヘンプ)黄金色、の3つがあげられます。
苧麻、亜麻、大麻は異なった植物ですが、これらから作られる繊維を「麻」と呼んでいます。
麻は植物の茎の靭皮部分から作られる植物繊維で、主成分はセルロースです。
麻は吸湿性が高く放熱性に優れていて肌に触れたときに涼しく感じるので、春夏物の衣料品に多く使用されてる繊維です。
着物では ほとんど「苧麻」が使われています。
麻の特性
・吸湿性が高い。
・放熱性に優れている。
日本の法律(家庭用品品質管理法)では、麻と表示されている場合は苧麻(ラミー)か亜麻(リネン)のことをいいます。
大麻(ヘンプ)は、指定外繊維と表示するよう決められています。
苧麻(ラミー)の特徴
・繊維の長さ・・・太くて長い
・糸の強度・・・天然繊維の中で一番強いと言われている
・質感・・・ハリ感が強い
・色味・・・白く絹のような光沢が有る
亜麻(リネン)の特徴
・繊維の長さ・・・細くて短い
・糸の強度・・・苧麻(ラミー)よりも弱い
・質感・・・比較的しなやか
・色味・・・黄味がかった色合いで光沢は苧麻(ラミー)よりも弱い
着物における、苧麻(ちょま)とラミーの違い?
苧麻(ちょま)とは、苧麻の茎の靭皮部分から採取した繊維のことをいいます。
イラクサ科の多年生の草木で、2種類に大別されます。
1つは葉の裏に白毛がある白葉苧麻で、もう1つは葉の裏に毛が無い緑葉苧麻です。
大正時代に中国から多量輸入され品種改良されるようになってから「苧麻」と呼ばれるようになりました。
古くは「からむし」「まお」「からそ」と呼ばれていて、麻織物として日常的に活用されていました。
日本では遺跡から縄文初期のものが発見されています。
苧麻(ちょま)とは?
手績みの糸の微妙な太さの違いには、手績みならではの味わいがあります。
苧麻(ちょま)といえば、宮古上布や越後上布などの上布に使われている細い苧麻(ちょま)の繊維のことをいいます。
現在では福島県昭和村で苧麻栽培から青苧作りが行われ、糸績みは魚沼地方で行われています。
苧麻(ちょま)の特徴
・絹のような光沢がある。
・通気性に優れている。
・吸湿、放湿性に優れている。
・速乾性に優れ水洗いが簡単にできるので、清潔を保てる。
ラミーとの違い
・手で裂かれて作られた糸・・・繊維に沿って裂かれているので摩擦によるケバ立ちが少なく光沢がある。
・手で績まれた糸・・・ネップがある
・上布には苧麻(ちょま)が用いられる。
・薄くてしなやかな素材感である。
ラミーとは?
機械紡績のラミーには、一見して機械的な均一感があります。
苧麻(ちょま)の変種で、茎も葉も苧麻(ちょま)よりも大きいものを、ラミーといいます。
ラミーは、繊維を細かく裂き、機械で一定の方向に揃えて、強い撚りをかけて糸状にします。
着物の世界では、麻においての絹紡紬糸のような糸をラミーと呼び、安価な麻織物に用いられています。
ラミーの特徴
・摩擦に対して毛羽立ちしやすい。
・肌への刺激が強い。
・安価である。
・通気性に優れている。
・吸湿、放湿性に優れている。
・速乾性に優れ水洗いが簡単にできるので、清潔を保てる。
苧麻(ちょま)との違い
・厚みやごわつきがある。
・毛羽立ちがあるので、それを抑えるために薬液を使用して表面を滑らかに加工してあるものもあります。
繊維の表面を薬液で覆っているので、繊維自体は呼吸していない状態になります。
・繊維が均一的である。
まとめ
・衣料品では、麻と表示されている場合は苧麻(ラミー)と亜麻(リネン)のことをいいます。
・着物の世界では、苧麻(ちょま)とラミーに区別されています。
・上布には苧麻(ちょま)を比較的安価な麻織物にはラミーが使われています。
・苧麻(ちょま)は現在は福島県昭和村で栽培されています。
・ラミーは苧麻(ちょま)の変種で、茎も葉も苧麻(ちょま)よりも大きいものをいいます。
終わりに
衣料品での苧麻(ラミー)と着物の世界での苧麻(ちょま)・ラミーの認識は少々違うようです。
着物の世界では苧麻を「ちょま」「ラミー」と区別して使用していて、植物としても「ちょま」と「ラミー」は違うものだというところが面白いところでした。
日常的に衣服として用いられていた苧麻(ちょま・ラミー)は、現代では高級品として扱われ、貴重な織物になりました。
目にする機会も少なくなり残念ですが、いつまでも作り続けられると良いなと思います。
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