小千谷縮は、麻素材の夏の着物として人気があります。
独特のシボに加え麻素材なので軽くて涼しく、着心地がよく着ていて楽なところが重宝されています。
手頃な価格、値段であることから、着物の他にも浴衣やワンピースとしての活用アイデアもあります。
手頃な価格のイメージの強い小千谷縮ですが、材料や製作工程の違いから3種類に分類することができ価格帯も大きく変わります。
小千谷縮の歴史とともに材料や製作工程の特徴や3つの小千谷縮の違い、価格、値段の違いや洗濯のお手入れ方法を知ることで、小千谷縮を上手に活用することができます。
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小千谷縮とは?
小千谷縮とは、主に新潟県小千谷市で生産されている先染の緯糸に強撚糸を使った麻織物をいいます。
新潟県南魚沼市で作られている越後上布と共に、国の重要無形文化財に指定されています。
越後上布とは 小千谷縮との違いや着物や帯の 歴史 特徴 証紙 お手入れ方法など
緯糸に撚った糸を使い織りあげ、湯もみすることでシボを出す技法が認められ、1955年に重要無形文化財に指定、1975年に経済産業省指定伝統的工芸品に指定、2009年にユネスコ無形文化遺産に指定されました。
特に重要無形文化財とユネスコ無形文化遺産では、日本の織物としては初めて指定登録されています。
小千谷縮は、夏着物の生地として人気があります。
独特のシボの風合いが美しく、暑い夏の日にも快適な着心地を楽しめる点やお求めやすい価格もあることから、夏の普段着に重宝されています。
小千谷縮の着物の特徴
小千谷縮の着物は、シボと呼ばれる独特の皺により肌触りがさらりとしています。
独特のシボに加え麻素材なので軽くて涼しく、着心地がよく着ていて楽なところが夏の着物としておすすめポイントです。
シボや麻素材により、通気性と吸湿性の優れた清涼感あふれる夏用の着物です。
小千谷縮を浴衣として着る?
小千谷縮には、重要無形文化財指定品と経済産業省指定伝統的工芸品と機械織り普及品の3つの種類があります。
機械織り普及品の小千谷縮は、お求めやすい価格設定、値段になっているので、色々な色柄を試すことができます。
機械織り普及品の小千谷縮は3万円台の商品もあるので、着物に限らず浴衣として着る方法もあります。
小千谷縮の反物から浴衣やワンピースに仕立てて着るアイデアもあるので、麻素材の浴衣や洋服として活用するのも良いかもしれません。
ストールも商品化されていて、夏の日焼け対策や冷房対策に役立ちます。
小千谷縮の歴史
越後の国の新潟では、昔から越後麻布という上質な麻布が織られていました。
当時の原料の麻は、山に自生する山苧(やまそ)を使っていましたが、越後麻布が有名になるにつれて麻を畑で栽培するようになりました。
この栽培した麻を青苧(あおそ)と名付けました。
麻布は白無地の丈夫な布であったことから、雪深い地方のではありましたが、重ね着や刺し子をしたりと工夫をしながら、1年を通して衣類に使われていました。
この越後麻布をアレンジして小千谷縮(おぢやちぢみ)が作られました。
小千谷縮は、江戸時代の中期に、播州明石の浪人である堀次郎将俊(通称明石次郎)が小千谷に移り住み、白い越後麻布を縮ませることに成功したのが始まりとされています。
当時は憧れの着物として人気が高く、年間23万反も作られていました。
冬の湿気が糸作りや織りに適していることから、農民の副業として冬に生産されていました。
小千谷市には、堀次郎将俊を祀るために建てられた御堂の「明石堂」があり、明石堂のそばには、堀次郎将俊の妻のお満が夫を助けるために布を晒した池があり、「お満ヶ池」と名付けられています。
堀次郎将俊(通称明石次郎)が成功させた小千谷縮は、越後麻布が進化して夏の高級着物として全国に広がり現在にいたります。
小千谷縮の15の製作工程
- 苧麻栽培
- 苧績み
- 撚り・・・糸より
- 糸繰り(いとくり)・・・1本の糸作り
- 墨付け
- くびり・・・絣模様の防染
- 染
- くびりほどき
- 絣合わせ
- 筬通し・・・経糸通し
- 織り
- 湯もみ
- 水洗い
- 雪晒し
- 仕上げ
3種類の小千谷縮 重要無形文化財指定品と経済産業省指定伝統的工芸品と機械織りの普及品
小千谷縮の織り物は、材料や制作過程によって重要無形文化財指定品と経済産業省指定伝統的工芸品と機械織りの普及品の小千谷縮の3つの種類に分けられます。
湯もみや雪晒しが小千谷縮の特徴的な手法です。
重要無形文化財小千谷縮 越後上布技術保存協会(越後上布小千谷縮布技術保存協会)で技術が継承されています。
重要無形文化財指定の小千谷縮の材料や手法、技法
国の重要無形文化財に指定されている小千谷縮は、苧麻から糸を手績みして居坐り機で織られたものをいいます。
重要無形文化財に指定されている、材料や昔ながらの手法の工程
- 経糸緯糸ともに苧麻を手績みした糸を使用すること
- 手括り(てくびり)による絣糸作り
- 居坐り機(いざりばた)を用いて織る
- 湯もみ、足踏みによるシボ出し
- 雪晒しによるさらし
【糸作り】・・・経糸緯糸ともに苧麻を手績みした糸を使用すること
小千谷縮などで使われている苧麻を原料にした糸作りのことを「苧績み(おうみ)」といいます。
苧麻はイラクサ科の多年草で、現在は福島県昭和村で作られていて、小千谷縮や越後上布の原料とされています。
苧麻の外側の青皮を剥ぐと美しい靭皮が残ります。
この靭皮の肉質を取り除いた繊維部分を青苧(あおそ)といい、ぬるま湯に浸けて柔らかくしてから水気を切った青苧で苧績みの工程が始まります。
苧績みは、この青苧を口にくわえながら爪や指先を使い髪の毛くらいの細さに裂き、裂いた糸を唾液で湿らせながら指先でつないで1本の長い糸を作っていきます。
緯糸では、細い部分と細い部分を繋ぐようにして撚りをかけていきます。
経糸を績むときは、糸を強くするために糸をくぐらせて結んで績むので、緯糸のように撚り合わせて績む作り方よりも時間がかかります。
青苧は乾燥に弱く、夏場などでは糸がぷつぷつと切れて作業がはかどらないため、冬の寒い時期が適しています。
1反分には700g~800gの糸が必要で、これだけの糸を績むには3か月以上必要になります。
手や口を使って作るため、糸作りの間はハンドクリームや口紅なども付けられません。
【染、絣作り】・・・手括り(てくびり)による絣糸作り
絣糸を作りために、括る部分に墨付けを行います。
墨付けの工程では、木羽定規や紙テープを参考に墨で印をつけ、墨印の付いた部分を手で括っていきます。
括った部分が防染されることで染まらない部分ができ、絣模様を織りあげることができます。
絣糸は、経糸緯糸に使われる場合と、緯糸のみに使われる場合があります。
【織り】・・・居坐機(いざりばた)を用いて織る
織には、最も原始的な織機である居坐機を使って織られています。
緯糸を1本通すたびに絣合わせをしながら織り進んでいくので、経糸緯糸ともに絣糸の複雑な文様の場合は、1日に15㎝ほどしか進むことができません。
糸作り同様に織るときも湿度の管理が大切になり、雪に覆われた冬の季節が最適です。
湿度を保つためには、暖房などで室内が乾燥しないようにしなくてはいけないので、寒さの中での居坐機での織の作業は体力的にも重労働です。
小千谷縮の縞模様や絣模様が織られるようになったのは1970年以降で、古い小千谷縮は、ほとんどが藍で染めた藍地に白の絣模様でした。
【湯もみ】・・・湯もみ、足踏みによるシボ出し
織りあがった布の仕上げとして、まず湯もみを行います。
湯もみをする前の生地には糊がついているので、ぱりぱりとした状態になっています。
この生地についている糊を、湯の中で揉んで取り除き柔らかくしていきます。
「舟」と呼ばれる木製の水槽の中にぬるま湯を入れ、足踏みすると糊が解けて、シボが出てきます。
足でこするように刺激を与えて、シボの状態を見ながら丁寧かつ手際よく行うことが大切です。
江戸時代から湯もみは、舟の中に入って足踏みをしてシボを出していました。
【 雪晒し】・・・雪晒しによるさらし
最終仕上げの工程が雪晒しです。
雪の上に反物を広げて、日光に当てる作業を約1週間かけて行います。
雪の上に発生するオゾンには、殺菌や漂白作用があるので、白地の場合は白さが際立ち、絣の色が落ち着き色柄がはっきりとさせる効果があります。
経年劣化による色褪せや汚れなども、再び雪晒しをすることで鮮やかさが蘇り綺麗な状態になります。
このことを「小千谷の里帰り」といいます。
毎年3月の晴天に行われるため、春の訪れを知らせる風物詩となっている雪晒しですが、近年の温暖化や継承者の減少のため貴重な技術になっています。
経済産業省指定伝統的工芸品の小千谷縮の材料や手法、技法
重要無形文化財の小千谷縮と比べると簡略化している材料や工程
- 手績み糸→ラミー糸
- 手括り→摺込み捺染
- 居坐り機→高機
経済産業省指定伝統的工芸品の材料や手法の工程
- ラミー糸を使用する
- 摺込み捺染による絣模様
- 高機による手織り
- 湯もみ、足踏みによるシボ出し
- 雪晒しによるさらし
【糸作り】
主にラミー糸を使用しています。
ラミー糸は苧麻(ちょま)の変種で、茎も葉も苧麻よりも大きいラミーから作られた糸をいいます。
ラミーの繊維を細かく裂き、機械で一定の方向に揃えて、強い撚りをかけて糸状にしたものがラミー糸になります。
ラミー糸の詳しい内容をご覧ください。
【染、絣作り】
一般的に、摺込捺染で作られます。
摺込み捺染とは、整経した糸に染料をへらで摺り込んで染める方法をいいます。
木羽定規を使い手で摺込んで、絣糸を作っていきます。
【織り】
高機による手織り、または、半自動機で織られています。
【湯もみ、足踏み】
ぬるま湯の中で足で踏みながら糊を落とすことで、シボが生まれます。
【雪晒し】
雪の上に反物を広げて日光に当てることで、白地の場合は白さが際立ち、絣の色が落ち着き色柄がはっきりとさせる効果があります。
機械織りの普及品の小千谷縮の材料や手法、技法
経済産業省指定伝統的工芸品の材料や手法の工程が更に簡略化しています。
- 2、絣作りは行わない
- 3、高機→力織機
- 4、足踏み→手もみ
- 5、雪晒しは行わない
機械織りの普及品の材料や手法の工程
- ラミー糸を使用する
- 絣模様は行わない
- 力織機での機織り
- 手もみによるシボ出し
- 雪晒しは行わない
【絣作り】
機械織りでは絣合わせをすることは難しく、絣柄の商品は見かけません。
主に無地や縞、格子のシンプルな柄付けになっています。
小千谷縮の証紙 重要無形文化財指定と経済産業省指定伝統的工芸品の証紙
重要無形文化財指定の小千谷縮の証紙
織り始め部分の織りこみに重要無形文化財の文字とユネスコの各種証紙がついています。
越後上布とは 小千谷縮との違いや着物や帯の 歴史 特徴 証紙 お手入れ方法など
にもありますが、上の写真のような各種の証紙が重要になります。
経済産業省指定伝統的工芸品と小千谷縮の証紙
【経済産業省指定伝統的工芸品】
伝統的工芸品には共通の伝統証紙と小千谷織物同業協同組合の証紙が付けられています。
小千谷織物同業協同組合の証紙には機名が記載されています。
【機械織りの普及品】
小千谷織物同業協同組合の証紙が付けられています。
小千谷織物同業協同組合の証紙には機名が記載されています。
小千谷縮の価格 値段
【重要無形文化財指定の小千谷縮】
重要無形文化財指定の小千谷縮を作るために必要な手績みの糸作りだけで、最低でも1年が必要です。
居坐り機での機織りは数カ月にも及び、年間の生産は3反ほどしかありません。
材料の確保や人件費を考慮すると、1反が数百万円の高額商品になります。
1反織りあげるのに2年近くかかることからも、現在ではほどんど流通することがない状態で、店頭で見かけることはまず無いといっていいです。
【経済産業省指定伝統的工芸品】
手績みと比較して均質な太さの紡績ラミー糸を使い、高機や半機械織りを使うことで効率よく織り進めることできます。
経済産業省指定伝統的工芸品の織り物は、原則手織りで織られているので、手織りの風合いが感じられる商品になっています。
20万円からの価格設定です。
【機械織りの普及品】
機械織で織られ、シボ出しは手もみで行い、雪晒しは行われていません。
機械織りなので絣での文様は難しく、縞や格子などのシンプルな柄行になります。
店頭などでお手頃な価格で見かける小千谷縮がこのタイプで、3つの中で最も多くの商品が流通しています。
3万円台から見かけられます。
小千谷縮の洗濯 お手入れ方法
小千谷縮は、麻素材なので自分で洗濯ができて乾きが早く、アイロンもいらないので手入れがとても簡単です。
袖たたみなどで畳んでから洗濯ネットに入れ、そのまま洗濯機で洗うことができます。
手洗いの上質コースに設定すれば、より安心にあっという間に綺麗になります。
洗濯後は風通しの良い場所で陰干しで乾かします。
小千谷縮独特のシボの風合いを損なわないために、アイロンがけは行いません。
アイロンをかけてしまうと、シボが消えてしまい小千谷縮の良さがが失われてしまいます。
シワが気になる場合は、手でたたいて手のしをして伸ばすようにする程度で十分です。
盛夏では、少しの間着ただけでも汗が付くので、出来ることなら着用のたびに洗いたての綺麗な着物に袖を通したいです。
小千谷縮はお手入れの費用や時間を気にすることなく、自分で簡単に洗濯できるので気軽に着ることができるのも良い点です。
シーズンが終わってしばらく着ないときは、専門のクリーニングに出すことをおすすめしますが、物によっては自分で洗濯をして汗を落として綺麗にしておけば十分な場合もあります。
シミや汚れがついてしまったときは、慌てて自分で手を加えずに専門家に相談することをおすすめします。
特に濡れた状態でのスレには注意してください。
小千谷縮のまとめ
【3種類の小千谷縮】
小千谷縮の織り物は、材料や制作過程によって3つの種類に分けられます。
- 重要無形文化財指定の小千谷縮(数百万)
- 経済産業省指定伝統的工芸品の小千谷縮(20万~)
- 機械織りの普及品の小千谷縮(3万~)
湯もみや雪晒しが小千谷縮の特徴的な手法です。
重要無形文化財に指定されている、材料や昔ながらの手法の工程
- 経糸緯糸ともに苧麻を手績みした糸を使用すること
- 手括り(てくびり)による絣糸作り
- 居坐り機(いざりばた)を用いて織る
- 湯もみ、足踏みによるシボ出し
- 雪晒しによるさらし
重要無形文化財と比較して、経済産業省指定伝統的工芸品の小千谷縮の簡略化している材料や工程部分
- 1、手績み糸→ラミー糸
- 2、手括り→摺込み捺染
- 3、居坐り機→高機
経済産業省指定伝統的工芸品と比較して、機械織りの小千谷縮の簡略化してる材料や工程部分
- 2、絣作りは行わない
- 3、高機→力織機
- 4、足踏み→手もみ
- 5、雪晒しは行わない
【小千谷縮の活用方法】
機械織りの小千谷縮の反物は価格帯が低いので、浴衣に仕立てたりワンピースに仕立てたりして活用するアイデアがあります。
【小地谷縮の洗濯方法】
麻素材なので自分で洗濯ができて乾きが早く、アイロンもいらないので手入れがとても簡単です。(シボがなくなるのでアイロンはかけない)