浴衣といえば、伝統的な藍一色で染める「長板中形」が有名です。
もともと浴衣は藍と白で夏らしい古典文様を染めたものでした。
古典的な印象を与える藍と白の浴衣ですが、私自身は着物が好きになってからは特に藍と白の古典文様の浴衣が好きになりました。
伝統工芸品の飛騨春慶の小物入れの蓋には「長板中形」の生地がはめ込まれています。
団扇のようで涼しそう♪
長板中形とは?
江戸時代から続く伝統的な浴衣の染織技法を「長板中形」といいます。
江戸時代にはじまり、明治時代に大流行した江戸浴衣が「長板中形」です。
長い板の上に生地を張って作業し、小紋よりも大きな柄の型紙を用いて染めることから「長板中形」「長板本染中形」、また江戸で生まれたので「江戸中形」とも呼ばれています。
白地に藍、または藍地に白模様に染められています。
熟練の技が必要とされている「長板中形」は、松原定吉、清水幸太郎が重要無形文化財(人間国宝)に指定されています。
長板中形の染め方
①約6.5メートルの長い樅の板に白生地を張り、その上に型紙を置いてヘラで防染糊を置きます。
②乾燥後に更に生地の裏にも表の模様とぴったりと重なるように糊を置きます。
③糊を乾燥させた後に豆汁を引き(豆汁引き )これが下染になります。
④藍瓶に浸し引き上げて空気にふれさせます(風を切る)。何度かこの作業を繰り返して染め上げます(浸染・・・しんせん、つけぞめ、ひたしぞめ)。
長板中形の特徴
「長板中形」の一番の特徴は、両面同板染であることです。
「長板中形」の染め方は、藍瓶の中に何度も浸して染める浸け染なので、表裏両面に糊を置いて防染する必要があります。
表裏の糊置きが綺麗にできていることを裏が返るといい「長板中形」の真髄といわれています。
表のみに糊置きをした状態で浸け染をすると、裏全面が藍に染まることで白い部分に藍を感じてしまい、「長板中形」の抜けるような白の美しさが表現できなくなってしまいます。
表裏の柄付けがきっちりと合った生地は、白が澄んだように抜けて上品で粋な仕上がりになります。
両面染の利点としては、表が汚れた場合などにも裏面を使用することができる点です。
浴衣は肌襦袢の上に着用するので、肌に直接あたることで特に掛け衿部分の汚れや擦れが多いと思いますが、掛け衿のみを裏返せば新たに気持ちよく着用することができると思います。
歩いた時にちらりと見える、裏面の藍と白の美しいコントラストも素敵なポイントですね!
終わりに
「長板中形」と記されている浴衣が数多くありますが、本物の「長板中形」とは異なる場合が多いので注意が必要です。
「長板中形」の特徴である、両面同板染を理解して、表記に惑わされないようにすることが大切ですね。
すっきりと涼しげな風情がただよう昔ながらの浴衣には、いつまでも飽きのこない魅力があり、今も根強い人気があります。
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