浴衣とは?浴衣の特徴、歴史
浴衣の種類 浴衣の活用方法4パターン
現代において浴衣には主に、寝巻きや夕涼みとしての浴衣と花火大会や夏祭りで着られる浴衣2パターンの用途があります。
それ以外にも最近では、手軽な街着としてのお洒落着として、浴衣を着物風に活用する場合や国際交流の場での活用もあります。
寝巻きや夕涼みとしての浴衣
浴衣は、かつて入浴時に着た「湯帷子(ゆかたびら)」が、入浴後に着られるようになり「浴衣(ゆかた)」と呼ばれるようになりましたが、本来の浴衣の用途としてがこちらになります。
花火大会や夏祭りで着られる浴衣
歴史的にみると、本来は日常着の着物とは区別をして入浴後やくつろぎ着として着用されていましたが、最近では夏祭り以外の場面にも、軽い街着としてファッションとしての浴衣の用いられ方も広まっています。
浴衣を着物風に着る
浴衣と着物の形は基本的に同じなので、長襦袢を下に着て浴衣を着物風に着ることもできます。
浴衣の中でも紅梅や縮などの変わり織りの生地や麻と綿の混合の生地の浴衣は、色柄によっては街着として着物風に装うことが出来る場合があります。
着物に見られるような色使いや模様や上質な素材の浴衣の場合は、見た目での違和感を感じることなく夏着物として気軽に着用することができ、浴衣の楽しみ方の幅が広がります。
浴衣の国際交流への活用
国際交流、異文化交流では、日本の文化の魅力を伝えるために浴衣が使われます。
着物ではなく浴衣が使われる理由には以下のものがあります。
- 着付けにかかる時間が短い
- 着付けに必要なものが少ない
- 低価格で購入しやすい
- 着用後のお手入れがしやすい
海外の方にも、浴衣をきっかけとして着物の魅力を伝えることができます。
現代の浴衣
着物とは?着物の特徴、歴史
弥生時代には、男性は1枚の布を体に巻き付けた「巻布衣(かんぷい)」を着用し、女性は袖なしの衣である「貫頭衣(かんとうい)」を着ていました。
着物の原形となった「小袖」は、小さな袖口の衣服のことをいい「貫頭衣(かんとうい)」から変化したもので、身頃に襟と衽、袖を付けたものになります。
平安時代に庶民の衣服から始まった小袖は、支配階級にも広まり多彩なファッションを生み出し現在に至ります。
着物の種類
留袖(黒留袖・色留袖)、訪問着、振袖、色無地、付け下げ、小紋があります。
それぞれに季節、着用時期による違いの、袷、単衣、薄物の着物があります。
浴衣は夏着物とは別物ではありますが、仕立て方や形状がほぼ同じであることから、浴衣も着物の一種ととらえられています。
浴衣と着物の違い
浴衣は着物の一種とされていますが、着物との違いがいくつかあります。
一番わかりやすい違いは生地の違いで、生地の質の違いは見た目にもわかりやすいです。
上質な素材の浴衣は、あまり違和感を感じずに着物として着用することができるので、1枚の浴衣で浴衣と着物との装いを楽しむことができます。
【浴衣と着物の違いのポイント9つ】
浴衣 | 着物 | |
着用時期 | 6月~9月 | 1年を通して(10月~4月は袷、6月~9月は単衣) |
着用シーン | カジュアルな場 | カジュアル~フォーマルな場 |
生地 | 綿、綿麻、麻、ポリエステル | 絹、綿、麻、ウール、ポリエステル |
仕立て | 単衣仕立て | 袷仕立て(10月~4月)、単衣仕立て(6月~9月) |
着付け | 長襦袢がいらない | 長襦袢を着用する。浴衣に比べ工程が多い。 |
帯 | 反幅帯、兵児帯、袋名古屋帯(八寸帯) | 丸帯、袋帯、名古屋帯(九寸帯)、袋名古屋帯(八寸帯)、京袋帯、反幅帯 |
足袋 | 基本的には履かない | 必ず履く |
履物 | 下駄 | 草履、雪駄、下駄 |
バッグ | カジュアルなバッグ | 利休バッグなど |
着用時期の違い
着用シーンの違い
【浴衣の着用シーン】
入浴時や入浴後など日常の生活の中から生まれた浴衣は、着物のように正式な場に着ることはできません。
夏祭りや盆踊り、花火大会、カジュアルな食事会など、夏のイベントに着ることができます。
浴衣を着て良いシーン
- カジュアルな私服で行ける場所
- 夏祭りや花火大会
- 友達や恋人とのデート
- カジュアルな食事
浴衣が適さないシーン
- 洋装でジャケット着用やドレスが求められる場所
- 結婚式や祝賀会などのパーティ
- 目上の人や親族との挨拶の場
- 高級レストランでの食事
- お茶会
気の張らない気軽なお茶会であっても、浴衣での参加は避けたほうがよいでしょう。
【着物の着用シーン】
着物は、結婚式や祝賀会、お宮参り、入学式、卒業式などのフォーマルな場や、和のお稽古時や日常のお出かけなど様々な場で着ることができます。
着物の中でも留袖(黒留袖・色留袖)、訪問着、振袖などは、フォーマルな場にふさわしく、小紋や紬などのお洒落着の着物はお稽古時やカジュアルなお出かけなど普段着の着物として着用されます。
生地、素材の違い
【浴衣の素材】
綿
綿は発色が良くて通気性や保温性の高い素材です。
発色が良い綿ですが、植物染料が非常に染まりにくいという特性があります。
江戸時代からの伝統を受け継ぐ浴衣の素材は、綿コーマ、綿紅梅、綿絽などが主流です。
最も一般的な綿コーマは、意外と生地に厚みが感じられ、綿の持つ保温性が高い特性からも、涼しさを求めるための素材にはそれほど適していないと感じます。
綿素材でより涼しさを求められる場合は、綿紅梅や綿絽の浴衣をお勧めします。
その他にも、浴衣ブームに伴って登場した奥州木綿があります。
- 綿コーマ・・・丈夫な綿のコーマ糸で織った平織りの素材をいい、浴衣の生地としては最も一般的な素材になります。(コーマ糸とは、コーマという機会を通して紡績した綿の細番手の最高級の糸のことを言います。)
- 綿紅梅・・・薄手の地に太めの糸を織り込んで表面に凹凸を出し、縞や格子を織りで表現した木綿織物です。
- 綿絽・・・記事に隙間を作りながら織っていく夏の織物である絽織りを木綿の糸で表現した、透け感が爽やかな印象を与える織物です。
- 奥州木綿・・・やや茶色がかった地色が特徴的で、綿素材ですが紬のようなざっくりとした素材感から奥州紬とも呼ばれています。
綿と麻の混合素材
綿麻素材は、綿100%の素材よりも通気性や肌触りが良く軽いことからも、より涼しさを感じる素材になります。
また、麻100%の場合は皺になりやすいことが気になりますが、綿と麻を混ぜることで皺を抑える効果があります。
綿素材と同様に綿麻素材の生地は自宅で手洗いすることができるので、クリーニングに出さずに手軽にお手入れをすることができます。
- 綿麻混合生地・・・綿と麻の混じった繊維素材をいいます。
麻
麻は苧麻やラミー糸を原料にした涼やかな布です。
通気性、吸湿性、速乾性に優れており独特な張りがあり、さらりとした肌触りが特徴になります。
他の素材と比較しても清涼感が優れていることから、夏の着物の素材としてお勧めの素材です。
苧麻を原料とした布は上布といい、天然素材の中でも強く絹のような光沢をもっています。
また、水に強く自宅で洗濯することができる点も、夏の着物に適しています。
麻の着物は皺が付きやすいことから懸念される場合もありますが、麻ならではの皺も愛おしいもので、麻の清涼感とともに麻の皺を楽しむことも夏の着物の楽しみの1つに感じています。
皺が付きやすい麻素材ですが、水スプレーをしておくことで簡単に綺麗に元通りに整えることができます。
ポリエステル、東レ「セオα」
最近では、ポリエステル素材の浴衣も多く販売されています。
ポリエステル素材は耐久性が高く、速乾性があり、耐候性に優れています。
また、軽くて皺になりにくく扱いやすさが特徴の生地です。
発色が良いことから、色とりどりのバリエーション豊富なデザイン性の高いおしゃれな浴衣が見られます。
安価なポリエステルの場合は、いかにもポリエステルだと分かる見た目や静電気などが気になります。
撫松庵の浴衣に使われている東レの「セオα」というポリエステルの中でもかなり優れた素材で、私も毎年必ず着用している素材です。
東レ「セオα」
- 優れた吸水性、速乾性で、汗をさっと吸い取り素早く発散させ、洗濯後も早くかわきます。
- 軽くてさわやかな着心地が特徴で、さらさらとしたドライ感と清涼感が暑い夏にお勧めです。
- 洗濯ネットに畳んだ着物を入れて、手洗いコースで洗濯機であらえます。軽めに脱水をかけ風通しの良い場所で陰干しするだけで、シルエットを美しく保つことができます。
- 一見してポリエステルとは分からないセオαの生地は優れものです。
【着物の素材】
着物の素材の代表といえば絹ですが、それ以外にも木綿、麻、ウール、ポリエステルなどがあります。
木綿、麻、ポリエステルは浴衣の生地と共通の素材ですが、着物に使われている生地と浴衣に使われる生地とでは趣が異なります。
絹
- 光沢・・・絹の光沢は、蚕が作り出す蛋白質からできた繊維の構造にあります。フィブロイン蛋白の不均一な3角形の断面により、光が当たった時の反射角殿違いによって、絹の輝きが生まれます。
- 伸展性・・・絹糸は細い糸が束になり1本の糸になっています。細くて繊細な糸から織られた絹素材の生地は一見弱そうに思われがちですが、伸展性が高いことから綿やウールに比べても繊維の中では強靭な種類になります。
- 吸湿性、通気性、保温性・・・天然素材の中でも絹は吸湿性に優れていて、綿と比較すると1.3~1.5倍の吸湿性があるといわれています。多孔構造である絹は繊維の間に沢山の空気を含むことができるので、熱伝導率が低いことからも寒さに影響されにくい素材です。
- 静電気・・・吸湿性に優れた絹は合成繊維に比べ静電気がおきにくい素材です。
- 紫外線カット、UVカット・・・繭の中の蚕が紫外線を浴びないように、蚕を守る機能があり、紫外線の約90%をカットします。
- 染色・・・絹は草木や化学染料のどちらにも染まりやすく、きれいな発色の仕上がりになります。
ウール
羊毛、または羊毛を原料とした動物繊維で織りあげた織物をいいます。
厚手で皺になりやすいことから、普段着の着物の素材として使われています。
ウールの着物を汚れがついた状態で箪笥に収納してしまうと、虫食いの原因になってしまいます。
ウールは虫がつきやすい素材なので、ほかの素材と区別して保管しておくことをお勧めします。
自宅でのお手入れは、固くなることがあるため、ドライクリーニングがお勧めです。
浴衣と着物の見た目の違い
仕立ての違い
浴衣と一般的な着物の仕立ては衿の仕立て方が異なりますが、その他は同じサイズで同じように仕立てます。
普段着の着物を浴衣の衿と同じ仕立て方をすることもありますが、一般的な浴衣と着物の衿の仕立て方の違いをご紹介します。
着付けの違い
帯の違い
浴衣と着物には帯には違いがあります。
女性の帯は、浴衣のほうが素材の種類が豊富で、様々な結び方があることから、装いに遊び心独自の工夫など着る人の個性を表現しやすくなっています。
【浴衣の帯】
浴衣の帯には、反幅帯や小袋帯、兵児帯、袋名古屋帯が使われます。
浴衣の帯結びでは、帯枕や帯締め、帯揚げを使わずに結ぶことができます。
反幅帯、小袋帯
着物の帯の役半分の幅の帯を反幅帯といいます。
兵児帯
浴衣や男性、子供用の帯として兵児帯が使われます。
袋名古屋帯
お太鼓部分が2重にかがった仕立ての名古屋帯です。
浴衣に袋名古屋帯を合わせる場合は、紗献上博多帯を選ぶと上品な浴衣の装いが楽しめます。
【着物の帯】
丸帯、袋帯、名古屋帯(九寸帯)、袋名古屋帯(八寸帯)、京袋帯、反幅帯などがあります。
帯枕、帯締め、帯揚げを使って帯回りの装いや、着物とのコーディネートを楽しむことができます。
【男性の帯】
男性の場合は浴衣と着物に共通した角帯を使います。
角帯の代表的な結び方として貝ノ口があり、兵児帯を使った装いはよりくつろいだ印象を与えます。
足袋の違い
【浴衣の足袋】
浴衣を着る際には、基本的には足袋は履かずに素足に下駄を履きます。
年齢が行くごとに、浴衣に通常の足袋を合わせることで、落ち着いた印象の浴衣の装いになります。
最近では、レースなどのお洒落で涼しげな足袋を合わせる浴衣姿を見かけることがあります。
【着物の足袋】
着物の装いには、足袋は必ず履きます。
着付けをする手順としても、まず足袋を履いてから着物の着付けを始めることが基本になっています。
夏用の麻素材の足袋もありますが、キャラコ素材の足袋は1年を通して履くことができます。
履物の違い
バッグの違い
浴衣と着物の違い まとめ
浴衣と着物の違いを理解し、場にふさわしい装いができるよう使い分けましょう。
浴衣 | 着物 | |
着用時期 | 6月~9月 | 1年を通して(10月~4月は袷、6月~9月は単衣) |
着用シーン | カジュアルな場 | カジュアル~フォーマルな場 |
生地 | 綿、綿麻、麻、ポリエステル | 絹、綿、麻、ウール、ポリエステル |
仕立て | 単衣仕立て | 袷仕立て(10月~4月)、単衣仕立て(6月~9月) |
着付け | 長襦袢がいらない | 長襦袢を着用する。浴衣に比べ工程が多い。 |
帯 | 反幅帯、兵児帯、袋名古屋帯(八寸帯) | 丸帯、袋帯、名古屋帯(九寸帯)、袋名古屋帯(八寸帯)、京袋帯、反幅帯 |
足袋 | 基本的には履かない | 必ず履く |
履物 | 下駄 | 草履、雪駄、下駄 |
バッグ | カジュアルなバッグ | 利休バッグなど |
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