懐かしい貝桶文様にヱ霞の総手刺繍ですが、文様の意味や技法をふまえて、もう一度、振り返ってみたいと思います。
貝桶文様にヱ霞文様
貝桶文様は何度見ても「いいな~」と思う文様の1つですね。
器物文様の1つです。
貝合わせの貝を入れる器を貝桶といい、上流階級の女の子の遊びとして、貝を入れる桶も美しい物を用意されたようです。
文様の説明
貝桶文様
貝桶の蓋の部分には、有職文様である七宝文の柄付けです。
同じ大きさの円を、円周の4分の1ずつ重ねていく文様です。
割り付け文様の1つで、有職文様では輪違いと呼ばれています。
七宝とは仏教の言葉で、金、銀、瑠璃、玻璃、珊瑚、瑪瑙、真珠の7つの宝石を意味します。
この時に初めて自分で配色を考えました。
漠然と考えていても納得のいく配色にならないような気がしたので、七宝について調べて、破れ七宝を意識して配色したのを思い出します。
破れ七宝とは七宝が途中で破れたような文様をいい文様のアクセント的に用いられることが多いそうです。
この時は赤、青、白の3色をあまりバラバラにしないように途切れた雰囲気を出すように意識して配色しました。
これだけの少しの部分の配色ですが、自分で何か小さなこだわりを持って取り組むことが出来たので楽しかった記憶が残っています。
ヱ霞文様
ヱ霞文様は形のない霞を、カタカナのエの字のように表した文様です。
横長でふくらみを持っているのが特徴になります。
このエの形が4つ繋がったものを春霞文と言います。
エの形が4つ繋がると、かなり主張したヱ霞文様になるような気がしますが、風情のある文様名ですね。
今回の霞は2つずつなので、普通に霞文になります。
菅繍で霞の中を繍って、片駒で輪郭をとってあります。
この菅繍の技法は、好きな技法の1つです。
緯糸の1目おきに糸を渡して、とじ押さえをしてあります。
あまり、キラキラさせたくなかったので金糸ではなく絹糸を選び、霞の雰囲気を出せるように控え目な色を使いました。
①の記事にも書きましたが、絹糸が控え目過ぎて、ただの下ごしらえのようになってしまいました。
「やっちゃったな~」と思っていましたが、アドバイスにより、輪郭を金糸の片駒(1本)で囲んだことでイメージ通りの仕上がりになりました。(こちらは、成功!!!)
色が変わっている部分は、貝のシルエットなのですが、これに関しては「・・・」微妙な感じです。
やり過ぎ、凝り過ぎは禁物ですね。
こんなことも含めて、勉強になりました。
組紐文様
器物文様の1つになります。
組紐に使われる技法は、いくつかの技法があります。
優しい技法から順に
網代組ぬい(花筏の組紐に使用)→中結えぬい→2重中結えぬい→4つ組ぬい
があります。
貝桶文様では中結えぬいの技法で繍ってあります。
組紐繍の中で最も格調が高いのが、4つ組ぬいになります。
斜めの角度によって、間延びした印象になったり、詰まって窮屈な印象になったりするので組紐らしさを表現出来る、ちょうど良い角度を探るのが難しいところです。
やっぱり、菅繍の霞がお気に入りです❤
足は金駒平埋めです。
その他
技法
麻の葉掛け 沙綾型 ぬしろぬい 緯地引き
金駒で貝桶の輪郭を象る前はこんな感じでした。
名古屋帯の仕立方
使用している駒塩瀬の生地は、好みの色に京都で染めてもらっています。
イメージ通りの色目に染めあがってくるかも、ドキドキの楽しみのひとつです。
仕立も同じく京都でお願いしています。
前幅を広めに取りたいので、松葉仕立でお願いしています。
裏生地は付けていないので、帯芯がそのまま出ています。
通常、塩瀬の生地は生地との馴染み、添いを良くするために起毛タイプの帯芯を使うそうですが、裏面に出ている帯芯が毛羽たつとみっともないので、起毛タイプではないすべすべしたタイプの帯芯で仕立ててくださいました。
こういうお心使いはとても嬉しいですね。
やっぱり、古典文様はいいですよね~❤