手描きによる文様表現が可能となるとともに、独特な発展を遂げた加賀友禅ですが、加賀友禅の着物をひと目見て見分けられるようになれたら素敵だと思いませんか?
加賀友禅の文様や色彩の特徴や加賀友禅作家の作風を知ることで、加賀友禅が見分けられ作家名も分かるようになってきます。
まずは、加賀友禅の歴史からなる特徴を知り、京友禅や江戸友禅との違いを知ることが役立ちます。
加賀友禅とは 石川県金沢市の伝統工芸品
加賀百万石の城下町だった、石川県金沢市を中心に生産されている手描き友禅染を加賀友禅といいます。
作業工程の1つである糊落としには、大量の水が必要なことから、金沢市を流れる犀川のそばで加賀友禅が発展しました。
加賀友禅の歴史
梅染め(梅染め)
加賀友禅の起源は、鎌倉時代にあった加賀の国の独特の染技法である「梅染」にあります。
「梅染」とは、梅の樹皮や根を細かく砕いて煎じて作った染液で染める技法や技法を用いて染めた無地染をいいます。
染めの工程の回数を調整することで、微妙な色の違いを出すことが出来る繊細な技法で、赤茶色のものを「赤梅染」といい、染の回数を重ねた黒茶色のものを「黒梅染」といいます。
寛正5年(1465年)には能登産の上布の染に限られていましたが、永禄10年(1567年)には小松産の絹織物にも染められるようになりました。
加賀御国染
江戸時代に入って加賀藩の文化奨励策に起因し、全国各地から技術に秀でた工芸職人を加賀藩に呼び寄せることで、工芸文化の層の厚さや質の高さともに発展していきました。
「加賀御国染」とは、「兼房染(けんぽうぞめ)」や「色絵」「色絵紋」の技法が確立されたことによって、無地染であった「梅染」に文様が施されるようになり、これらを総称して「加賀御国染」と呼ばれるようになりました。
「色絵」とは絵画を染色の技法で表現したもので、「色絵紋」は衣服の紋の周囲を模様で囲ったものをいい、軸や帛紗などに用いられており、後の「加賀紋」となります。
「色絵紋」の繊細な技法は加賀友禅の原点といわれています。
宮崎友禅斎と加賀御国染
京都で人気の扇面絵師であった宮崎友禅際は、糸目糊(友禅糊)を創案し、白い生地に絵画のように文様を描き、多彩な染め模様を作り上げました。
徳川家の女性のみに着用が許されていたといわれる「茶屋辻」からヒントを得て、友禅染がうまれたといわれています。
このように京都で「友禅糊」を開発して友禅染めの基礎を確立させた宮崎友禅斎は、晩年となった正徳2年(1712年)に金沢に移り住み御用紺屋棟取の太郎田屋に身を寄せ、「加賀御国染」に糸目友禅糊の技法を加え広めることで加賀友禅がうまれました。
また、宮崎友禅斎は石川県の能登穴水の生まれで、晩年に金沢に帰り紺屋頭取黒梅屋のもとで染め衣装の下絵を描いていたとも伝えられています。
加賀友禅の5つの特徴
友禅という言葉は「糊で防染した、きものの文様を描く技法」 の意味があり、糸目糊防染の技法の創始者と言われている、「宮崎友禅斎」の名前から付けられています。
加賀友禅は、図案制作、文様の下絵から彩色のほとんど全ての工程を一人で行うことから、作家性の強い染め物になっています。
糸目糊を使って防染するのは京友禅と同じですが、加賀友禅の伝統的な特徴は、文様、図案にあります。
また、京友禅のように箔置きや刺繍、絞りを併用せず、手描きの染めだけで仕上げるのが伝統的な手法になっています。
- 絵画調で花鳥風月や個展をモチーフとしている。
- 加賀五彩を基調とし、古典の色調を用いて多彩である。
- 虫喰いや先ぼかしなど自然のままを表現している。
- 糸目糊での防染による手描きの美しさ。
- 染色後の加飾や他の染織技法との併用が少ない。
図案、文様
緻密で写実的な草花模様が中心で、小さく優しげな花をモチーフとした傾向があり、また古典をモチーフとしています。
現在の作家の作品には、自然を愛でながら伝統を残しつつ、大胆なデザインや華やかな色使いの、作家の持ち味を生かした個性的な作品が見られるようになっています。
加賀五彩(かがごさい)
臙脂、藍、黄土、草(緑)、古代紫または墨の五色を基調とし、多彩ながらも詫びた色彩で北陸の自然を表現しています。
臙脂
藍
黄土
草
古代紫
虫喰い葉(わくらば)
反対色で暈した木の葉に小さな穴や墨色の点で、虫喰いの状態を表現しています。
現在では虫喰い葉を描くことも、少なくなっている傾向にあります。
先ぼかし(外ぼかし)
京友禅とが逆に模様の端を濃くし、中心を淡く染めるぼかし方で色挿しをしています。
先ぼかし(外ぼかし)することで、絵に奥行きや立体感がうまれます。
糸目糊
手描き友禅である加賀友禅は、文様の輪郭をなす防線となる 「糸目糊」が最大の特徴であり、文様の美しさを表現する最大の魅力ともいえます。
糸目糊はもち米と糠、石灰、蘇芳を混ぜて作られています。
石灰と蘇芳が化学反応することで暗赤色となり糊置き忘れの防止になり、顔料であることから生地内に染料が染み込まない特徴があります。
≪目利きポイント≫
糸目糊に含まれている蘇芳の色が、白生地にほんのりと現れた輪郭線となっている点も加賀友禅の魅力であり、本物の加賀友禅の目利きポイントになります。
加賀友禅の制作工程の13工程
加賀友禅の制作工程は13工程で作られています。
作家自身が行う工程は以下の5工程になります。
- 図案制作
- 下絵
- 糸目糊置き(作家により外注を利用)
- 彩色
- 仕上げ
1.図案制作
作風を左右する図案化の作業になります。
金沢の自然、花鳥風月、伝統文化、古典などをもとに作家のオリジナルの作風が誕生する、作家の個性をもっとも表現することが出来る工程になります。
自然のスケッチや縮小での図案構想、着て美しく映えるデザインなど、実際の着物や帯の原寸大での図案を下絵として描かれます。
2.仮仕立て(仮絵羽仕立て)
縫い合わさる繋ぎ目部分の合口(あいくち)をあわせるために、白生地の状態で着物の形に仮仕立てします。
3.下絵
白生地を着物の形に仮縫いしたものを仮絵羽といいます。
この仮絵羽仕立てにした白生地に、図案の輪郭が分かりやすいように下からライトを当てながら青花を使い細い線で描きます。
下絵は、水で濡らすと消えるように青花(露草の一種の花の汁)で描きます。
着物の需要が高かった時代には、この下絵の作業をパートでの外注で行っていたこともありました。
青花での下絵が多少下手でも、その後の糸目糊置きで十分にカバーできるようです。
4.糸目糊置き
加賀友禅は作家が一貫して作業しますが、糊置きや地染め、蒸し、水元などは外注する場合があります。
糸目糊置きに関しては、作家によっては作家自身で行われていますが、外注する場合もあり、加賀友禅での糸目糊置きの伝統工芸士という方もいらっしゃいます。
5.地入れ
糊が生地上に落ち着いてから、大豆のしぼり汁で作った豆汁(ごじる)を生地に塗布し乾燥させます。
下絵の青花の線を消すと同時に糸目糊を生地に食い込ませるための工程です。
6.彩色
「加賀五彩」である臙脂、藍、黄土、緑、紫または墨の五色を基調とし、濃淡や暈しなどで多彩に作り上げるのが作家ならではの持ち味になります。
1枚の反物状態に戻した生地を伸子張りして、下から熱を与えて乾かしながら色を挿していきます。
作家によっては乾燥をせずに彩色を行う試みもされています。
彩色には細筆を用いられていますが、細筆といっても想像以上に太い筆を使って繊細な部分に彩色をされている様子には驚かされます。
7.下蒸し
伏せ糊置きの糊に染料が吸収されないようにするために行う工程です。
生地を蒸して彩色した色を生地に定着させます。
8.伏せ糊置き(中埋め)
地染めの工程で彩色された部分が汚染されないようにするための工程です。
彩色した上を糊で覆うように塗りつぶします。
9.地染め
仮仕立てした物を1枚の布の戻してから行います。
作家の希望の色に染め上がるように、捻いりな打ち合わせが大切になります。
10.本蒸し
生地を蒸すことで生地の繊維組織を膨張させ、生地の表面にあった染料を生地の中に定着させるお工程です。
色の定着に欠かせない工程で、さらに彩りが美しくなります。
11.水元(水洗い)
伏せ糊置きで使用した糊を洗い流す工程です。
友禅流しよもいい金沢ではかつては犀川で行われていましたが、現在では水質が安定している人工の川で作業されています。
12.乾燥、湯のし
生地の寸法を元に戻す工程です。
蒸気を使って生地の幅や繊維を均一に整えていきます。
13.仕上げ
制作の過程で生じた染料の色飛びや文様の色のにじみ、地色の染めむらなどを直します。
加賀友禅の2種類の証紙
「経済産業大臣指定伝統工芸品」の証である伝統証紙と「加賀染振興協会」が発行する証紙の2種類の証紙があります。
品質保持と共に類似品防止を目的として、加賀友禅の着物や帯、関連製品に貼付されています。
証紙以外にも、加賀友禅作家が制作した着物や帯には必ず作家の落款が記されており、伝統工芸品である加賀友禅の品質の証になります。
「経済産業大臣指定伝統工芸品」の証である伝統証紙
赤の証紙・・・「加賀染振興協会」が発行する手描き友禅の証紙
紫の証紙・・・「加賀染振興協会」が発行する型友禅の証紙
緑の証紙・・・「加賀染振興協会」が発行する合繊の証紙
赤の証紙・・・「加賀染振興協会」が発行する手描き友禅の小物の証紙
青の証紙・・・「加賀染振興協会」が発行する型友禅の小物の証紙
友禅の人間国宝「重要無形文化財」の木村雨山と二塚長生
写真左手が木村雨山の一越縮緬地の花鳥文訪問着
写真右手が二塚長二の白上げ技法の訪問着
人間国宝とは、「重要無形文化財保持者」として認定された個人を指す通称として使われています。
重要無形文化財とは、芸能や工芸技術などの無形の「技(わざ)」自体を指し、その「技(わざ)」を高度に会得して体現する個人として認定することを意味します。
「重要無形文化財保持者」の中には、人間国宝という言葉を使うことを避けてにいる場合もあるので注意が必要です。
また、「重要無形文化財」では工芸技術部門の染織での友禅にあたります。
加賀友禅での「重要無形文化財保持者」ではありません。
木村雨山(きむら うざん)
石川県金沢市出身、本名は文二
1891年~1977年(明治24年2月21日生まれ、昭和52年5月9日没)享年86歳
1955年、昭和30年に「重要無形文化財保持者」(人間国宝)に認定されました。
和田雲嶂(うんしょう)に加賀友禅を、大西金陽(こんよう)に日本画を師事しています。
昭和9年帝展特選し、戦後は日展や日本伝統工芸展で活躍し友禅の伝統技法に現代感覚をとりいれた伝統の再構築を試みるなど独自の作風を確立しました。
二塚長生(ふたつか おさお)
富山県高岡市伏木出身
1946年~
2010年に「重要無形文化財保持者」(人間国宝)に認定されました。
金沢市内の加賀友禅工房で伝統的な友禅の技法を修得したのちに独立されました。
30年前頃には加賀友禅の世界から離れ、糊糸目を主役とした独自の友禅の世界を作りあげました。
糊糸目による作品の特徴の1つである「白上げ」という技法は、友禅の糸目糊置きが用いられています。
石川県立美術館で行われた展示作品説明会では、二塚長生氏が木村雨山氏の実際のお仕事に携わった経験をもとに、木村雨山先生の作品作りについてお話されました。
友禅の重要無形文化財保持者 人間国宝の木村雨山と二塚長生の仕事
加賀友禅の作家と落款、値段 価格
加賀友禅作家とは、加賀染振興協会に落款を登録している加賀友禅技術者をいいます。
加賀友禅作家になるためには工房を営む加賀友禅作家に師事し、7 年以上の修行を積み加賀染振興協会の会員2名(師匠を含む2名)の推薦を得て、協会の会員資格を得る必要があります。
加賀友禅作家が制作した着物や帯には必ず作家の落款が記されており、伝統工芸品である加賀友禅の品質の証になります。
加賀友禅作家の落款を調べたい場合は、加賀友禅作家の落款で検索してください。
加賀友禅の着物が好きな方は、作家さんと相談しながら拘りの1枚をお誂えするのも楽しそうですね。
実際にお会いしたことがある加賀友禅作家や、所持している加賀友禅作家をご紹介します。
中町博志(なかまち ひろし)
逸品訪問着 国内手縫いお仕立て込み パールトーン加工込み オゾン洗い込み 超逸品!! 本加賀友禅石川県指定無形文化財 「中町博志」氏作 紫式部 送料無料
1,408,000円
加賀染振興協会理事であり、石川県指定無形文化財、加賀友禅技術保存会会員でもある中町氏は、本加賀友禅界では1,2を争うほどと言われています。
文様や色彩に特徴があり、ひと目見て心に残る作品が多いのが印象的です。
「IMAGINE ONEWORLD-KIMONO-プロジェクト(キモノプロジェクト)」 では、フィリピン共和国の着物の制作をされています。
髙平良隆(たかひら よしたか)
1969年に初代由水十久氏に師事されています。
1993年に石川県無形文化財技術保存者に認定され、加賀友禅技術保存会会員です。人気の高い作家の1人として知られています。
「IMAGINE ONEWORLD-KIMONO-プロジェクト(キモノプロジェクト)」 では、パナマ共和国の着物の制作をされています。
上田外茂二(うえだ ともじ)
1976年に毎田仁郎氏に師事されています。
1999年に石川県無形文化財技術保存者に認定され、加賀友禅技術保存会会員です。
「IMAGINE ONEWORLD-KIMONO-プロジェクト(キモノプロジェクト)」 では、ヨルダン・ハシミット王国の着物の制作をされています。
二代目由水十久(ゆうすい とく)
【無形文化財】加賀友禅 訪問着由水十久作 花束訪問着 着物 手描き友禅 正絹 紫色 友禅染 フォーマル 結婚式 パーティー 礼装 未仕立て 豪華 上品 エレガント
4,378000円はお高くてびっくりの価格、値段設定ですね。
1,98000円の訪問着もあります。
加賀友禅の作家の中でも童子の文様が人気のある、二代目由水十久(ゆうすい とく)の訪問着です。
細くて緻密、精緻な糸目糊で、繊細な文様が描かれています。
童子が纏っている着物の文様など細部に至るまで見所が多い、ずっと見ていて飽きない美しさです。
太田昌伸(おおた まさのぶ)
【太田昌伸】本加賀友禅訪問着伝統的工芸品「ジャスミン」構図の美。ぼかしに染め色際立ち…
385,000円
着物や帯以外にも、伝統工芸である加賀友禅とスニーカーという現代の履物を組み合わせた、新しい作品作りに取り組まれています。
石川県の伝統工芸を世代に関係なく幅広く、その魅力や素晴らしさを感じてほしいという想いから、工芸スニーカーが生まれたました。
お洒落は足元からといいますが、足元から加賀友禅を取り入れることも、楽しそうですね。
「IMAGINE ONEWORLD-KIMONO-プロジェクト(キモノプロジェクト)」 では、ウクライナの着物の制作をされています。
森田耕三(もりた こうぞう)
【袷のお仕立て付き】伝統工芸品 本場 加賀友禅 訪問着 森田耕三 作「りんごの花口」フォーマル用に hm2068【smtb-k】【w1】【後払い決済不可】
244,200円
森田耕三氏の工房は加賀友禅会館内にあり、加賀友禅伝統産業会館での指導や実演を担当しています。
確かな技術に加え、柔軟で新しい筆致や彩色技法により、友禅通の好みに応じた作品制作をされています。
着物以外にもタペストリーや染額などの制作に取り組み、加賀友禅会館で行われている加賀友禅体験などの参加型の催し物などの活動を思なわれています。
藤藁隆(ふじわら たかし)
訪問着【加賀友禅】 藤藁隆・作 ピンク色 <小鳥椿桃紫式部> 未仕立て 色紙付き 〜お仕立てオプションあり〜 /正絹/縮緬/袷/単衣/ ※メール便不可
792,000円
百貫華峰氏に師事とういことで、草花と小鳥の文様の美しさが特徴の作家です。
日展にも入選された確かな技術が評価が高く、穏やかな人柄が現れた作品になっています。
下村利明(しもむら としあき)
加賀友禅 訪問着 送料無料 フルオーダー手縫いお仕立て付き 本加賀友禅 下村利明氏作 野イバラ(春の着用におすすめ) 綺麗な空色 身長170cmまで、裄70.5cmまで
350,800円
金沢市内の森山町小学校で「思いを込めた加賀友禅卒業証書台紙づくり」として、加賀友禅の卒業証書台紙づくりの指導に取り組んでいらっしゃいます。
加賀友禅の普及のために、展示会やセミナーなどの活動にも力を注がれています。
鶴見晋史(つるみ くにちか)
東京友禅を坂井教人氏に師事し、加賀友禅を父親で日展作家の鶴見保次氏に師事されています。
日展入選の他にも多数の入選や受賞の経歴があります。
「IMAGINE ONEWORLD-KIMONO-プロジェクト(キモノプロジェクト)」 では、エルサバトル共和国の着物を制作されています。
山田武志(やまだ たけし)
お仕立て付き!本加賀友禅「山田武志」浜ちりめん高級訪問着 カタクリ
288,000円
世界中の国々を振袖と帯によって表現するプロジェクトである「IMAGINE ONEWORLD-KIMONO-プロジェクト(キモノプロジェクト)」 には、ソマリア連邦共和国の着物を制作されています。
佐藤賢一(さとう けんいち)
【大礼装展】【佐藤賢一】特選本加賀友禅訪問着伝統的工芸品「貝桶に松竹梅文」圧巻の友禅美!柄嵩重めの秀麗な一枚。
605,000円
お仕立て付き!本加賀友禅「佐藤賢一」浜ちりめん高級訪問着 雲取り茶屋辻文様
298,000円
「新しい加賀友禅」での作家4名の内の1名として、加賀友禅の訪問着「SWEET」を「制作されました。
澤田渓女(さわだ けいめ)
加賀友禅作家の中でも数少ない女流作家の一人で、女性ならではの繊細な感覚で描く文様が特徴となっています。
現在の加賀友禅「新しい加賀友禅」への取り組み
東京などでは「加賀友禅といえば、お見合いの時に着る着物」と言われているくらいに画一的なピンクやオレンジなどの淡い暖色系の色合いで、文様も花模様がほとんどといった印象が強いようです。
生産地の金沢では、作家の個性あふれる着物が流通していますが、更に新しい試みとして2016年には、第1回目となる加賀染振興協会と加賀友禅技術振興研究所の若手4名の加賀友禅作家による、消費者の意見を反映させた加賀友禅制作に取り組みました。
2017年の秋に発表となりましたが、消費者代表6名の内の1人として意見交換会、ミーティングに参加させていただきました。
加賀友禅 訪問着「雪の華」鶴見晋史
加賀友禅 訪問着「雫」山田武志
加賀友禅 訪問着「SWEET」佐藤賢一
2019年には楽器演奏家や服飾専門学校生の意見を取り入れ、モーツァルトのピアノソナタの音符の模様の高田克也作の「ハーモニー」や、和装洋装を問わず楽しめる羽織として一川忍作の「森羅万象」、ピアノ演奏に花を添える加賀友禅ドレスとして古泉良範作の「清香」が発表されました。
着物の枠を超えた加賀友禅の広がりが、より一層楽しみになる「新しい加賀友禅」となっています。
板場友禅(型友禅) 加賀友禅の型染
加賀友禅には手描友禅のほかに加賀小紋等の型友禅があり、金沢では型友禅のことを「板場友禅」と言っています。
型紙を使って文様を染める手法で、手描き友禅では表現できない緻密な文様が表現できるのが特徴です。
12㎝から13㎝の反物を板に張り付けることで固定し、型紙を染めつけていきます。
この板のあるところが板場といわれいて、板場で染めの作業をしているので「板場友禅」と言われています。
現在では、着物の需要が少なくなるとともに「板場友禅」の生産も少なくなり、加賀友禅の生産量の中でも2%程度となっています。
加賀小紋には、多色使いのものから単色使いのものまで、さまざまな印象の加賀小紋があります。
日本工芸会正会員の坂口幸市氏は、加賀染め小紋の伝統を受け継ぐ作品制作として有名な作家で、加賀小紋では唯一の伊勢型紙を使った本格的な型染めの小紋を制作されています。
自身で彫った伊勢型を使い手染めをし江戸小紋と似た染め方ですが、坂口幸一氏の加賀小紋は、より典雅ではんなりとした趣が特徴になっています。
加賀友禅、京友禅、江戸友禅の違い
宮崎友禅斎が糸目糊を創案したことで京友禅や加賀友禅の基礎が作られましたが、それぞれの社会的背景により特徴が生まれました。
加賀友禅は、写実的な草花模様を中心とした絵画調の柄と加賀五彩を基調とした色彩の落ち着きがあり、京友禅は、豪華で美しい図案小の文様を中心とし、箔置きや刺繍、絞りなどの装飾がされていることを特徴としています。
また、東京友禅という名称は加賀友禅や京友禅との比較で使われますが、技法的な違いはなく、それぞれの土地で育まれた環境によって趣の異なった仕上がりを楽しむことが出来ます。
加賀友禅と京友禅と東京友禅の違い
加賀友禅 | 京友禅 | 江戸友禅 |
写実的な草花模様を中心とした絵画調 | 華麗な図案調 | 江戸前の粋、古典と現代風が調和されている |
虫喰い葉 あり | 虫喰い葉 なし | 虫喰い葉 なし |
先ぼかし(外ぼかし) 端の部分が濃い | 端の部分が薄い | 多様 |
加賀五彩を基調とした多彩調 武家好みの落ち着いた品のある美しさがある | 淡青単彩調 公家好みの豪華で華やかな美しさがある | 洋風・オリエント風 白、藍、茶、などの落ち着いた渋い色合い |
彩色以外の加工や技法を原則用いない | 多数の技法や金、刺繍、絞りなどの装飾がされている | 多様化で制作者各々の独自性が高い |
一貫性 | 分業制 | 一貫性 |
加賀友禅の魅力
日本を象徴する着物の中でも、加賀友禅はもっとも格調の高い着物の1つといわれています。
加賀友禅は、図案制作、文様の下絵から彩色のほとんど全ての工程を一人で行うことから、作家性の個性や特徴が作品に強く表れます。
目の肥えた人では、落款を確認しなくても作品の図案や色彩によりどの作家の作品か分かるほどに、作品に作家の個性が感じられることが魅力の1つです。
また、彩色以外の加飾が施されていないことや、ほんのりとグレー味をおびた伝統的な色彩により、煌びやかな印象ではありませんが品や風格が感じられ、飽きが来ず年齢層が幅広く着用することが出来る点が加賀友禅の1つでもあります。
1枚1枚がとても魅力的な加賀友禅ですが、多数ある加賀友禅の着物の中からお気に入りの1枚を選ぶには、どのように選べばよいと思いますか?
金沢の老舗呉服店のベテラン店員さんが教えてくださったのですが、「作家名を気にせず、好きと感じる着物を選ぶ」ことが、まず大切とのことでした。
作家名がブランド名のようになっている加賀友禅ですが、作家名を確認して着物を選ぶのではなく、好きな着物を選んでから作家名を確認してみることをおすすめします。
加賀友禅の着物の種類や小物の値段、価格
加賀友禅の黒留袖、色留袖
黒留袖 手描き友禅 本場加賀友禅 限定品 茶谷孝志作 京の美 最高級 フオーマル 人気 結婚式 新品 未仕立 日本製 福袋2020
460,000円
未婚、既婚の第一礼装になります。
裾模様のみに染め紋様がほどこされており、地色は黒で染められた着物です。
紋は五つ紋、三つ紋(背に1つ、後袖に2つ)、一つ紋(背に1つ)があり、紋の数が多い方が格が上になります。
加賀友禅の振袖
【袷のお仕立て付き】加賀友禅 振袖 百貫石峰 謹製 fs506【smtb-k】【w1】【後払い決済不可】
858,000円
未婚女性の第一礼装になります。
成人式などの晴れの着物として用いられるきもので、袖丈が長いのが特徴になります。
袖の長さにより、本振袖、中振袖、小振袖の種類があります。
加賀友禅の訪問着
留袖や振袖に次ぐ準礼装の着物です。
仮仕立てした状態で、前後裾、肩、胸、袖などに文様を描き染め上げた着物になります。
上記の加賀友禅作家をご覧ください。
加賀友禅の付下げ
【袷のお仕立て付き】伝統工芸品 本場加賀友禅 稲手明仁 作 落款入り 付下げ 着尺「笹に木蓮」フォーマル用に tsk191【smtb-k】【w1】【後払い決済不可】
151,800円
訪問着の変わりに着用できる社交着になります。
気軽なお食事などにも活用できるので、幅広く着用することが出来ます。
絵紋加賀友禅
絵紋加賀友禅とは、袖に加賀紋などの絵紋を配し、裾には加賀紋や友禅模様を配した加賀友禅のおしゃれ着です。
合わせる帯により、幅広く着用することが出来ます。
実際には、あまり見かけることがない加賀友禅の着物です。
加賀友禅の小紋
型染めなどにより染め上げられた着尺で、お稽古着や普段のお出掛けにお洒落着として着用できます。
板場友禅のような単色の小紋では、帯合わせによって着用の場が広がります。
上記の板場友禅をご覧ください。
花嫁のれん
【ふるさと納税】花嫁のれん柄トレシー 3柄セット 【民芸品・工芸品・インテリア】
花嫁のれんとは、石川に古くから伝わる結婚式に行われている伝統で使われている暖簾をいいます。
花嫁が嫁入りの時に「花嫁のれん」を持参し、 花婿の家の仏間の入口に掛け、合わせ水の儀式や両家の挨拶が終わった後に、持参した「花嫁のれん」をくぐり仏前でお参りをしてから結婚式が始まります。
しばらくの間、来客のために新婚夫婦の部屋の入口に「花嫁のれん」が掛けられます。
花嫁のれん館では、明治から平成までの花嫁のれんの他にも、時代での流行りの暖簾や、麻や綿の素材の暖簾など珍しい暖簾を見ることが出来ます。
加賀友禅の小物
加賀友禅の名刺入れをつくってもらいました。
図案や配色などを作家の方と相談しながら、自分好みの名刺入れをお誂えすることが出来ます。
5,000円から10,000円
【満天カーテン】遮光カーテン 2枚組 加賀友禅 高級遮光カーテン 加賀花ものがたり
19,800円
加賀友禅のショールや、名刺入れなどは見かけますが、加賀友禅のカーテンもあります。
加賀友禅染めではなく、加賀友禅の作家によるカーテン専用のデザインを用いた、カーテンになります。
かなりド派手なカーテンです。
加賀友禅の体験、見学、着装が出来る施設や催し物
加賀友禅会館
加賀友禅会館では、加賀友禅を「知り」「体験」することが出来ます。
また、加賀友禅のきもののレンタルも行われています。
「新しい加賀友禅」で制作された、個性的な加賀友禅をいち早く着用することもできるおすすめの会館です。
加賀友禅会館は、金沢兼六園近くにあります。
加賀友禅工房 長町友禅館
加賀友禅工房 長町友禅館は、江戸時代初期文政年間(約200年前)創業の染元の千紅(ちこう)が運営する加賀友禅の工房で、加賀友禅の工程や歴史などを学ぶことが出来ます。
七代目当主の加賀友禅作家である寺西一紘の加賀友禅の着物や工芸品の展示してあり、 加賀友禅の本格的な彩色などの体験が行えます。
加賀友禅工房 長町友禅館は、金沢市長町にあります。
伝統加賀友禅工芸展
毎年7月に石川県立美術館で開催されている伝統加賀友禅工芸展では、最も多くの加賀友禅の作品が見られる工芸展になります。
加賀友禅の巨匠自らが受付をされるなど、地方ならではの朗らかとした雰囲気の感じられる工芸展になっています。
加賀友禅の巨匠による作品解説では、作家目線での作品の見方や見るポイントなども知ることができ、加賀友禅愛好家には良い勉強の機会になります。
日本伝統工芸展 金沢展
日本伝統工芸展の巡回での金沢展では、全国の伝統工芸品の展示会ですが、地元金沢の工芸品が多く展示されている工芸展になります。
染織部門においても、加賀友禅作家の作品が数多く展示されています。
加賀友禅新作競技会
加賀友禅会館で行われる加賀友禅新作競技会作品展では、加賀友禅の新作の着物や帯が20点~30点展示されています。
他にも加賀友禅作家による制作実演や友禅染体験、きもので撮影サービスなどの体験型のイベントになっています。
終わりに
石川県金沢市では伝統工芸が盛んで、毎年、多数の催し物が開催されています。
その中でも加賀友禅に関しての活動が多く、ミス加賀友禅や加賀友禅大使なども活躍されています。
加賀友禅の染め体験や着装でのお散歩、作家工房の見学など、地元金沢ならではの加賀友禅の着物や帯の楽しみ方や新しい発見を、是非体感しに来てください。
北陸新幹線利用の際には、是非、金沢駅構内にある金沢工芸の小窓をお忘れなく。
金沢観光の最後には北陸新幹線の金沢駅にある金沢伝統工芸がおすすめ
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